働き方改革を“地域で”広げていくためには?:企業だけのものではない(2/2 ページ)
「働き方改革」は日本経済の行方を左右する国家の重要課題となっている。働き方改革と一言に言っても、論点は多岐にわたる。ここでは“地域”の役割について考えてみたい。
“地域”の担う役割
個々の企業によって働き方が異なる中、企業に働き方改革への取り組みを促すために、“地域”(を担う地方公共団体)として何ができるだろうか?
まち・ひと・しごと創生本部では、働き方改革への施策として、「地域アプローチ」によるアウトリーチ支援(直接企業に出向き相談支援等を行う)を進めている。各都道府県に設けられた政労使等から成る「地域働き方改革会議」を推進母体とし、地域働き方改革包括支援センター(ワンストップセンター)を設置、働き方改革アドバイザーを養成し、地域企業へ直接相談支援などを行う取組みである(図表3)。
働き方改革アドバイザーには、地域の中小企業診断士、社会保険労務士などが想定されており、個別企業の相談や地域事例の共有、助成制度の紹介などを行うとともに、地域独自の企業認証制度等を活用していく。政府はアドバイザーの育成や情報提供等でバックアップする。
前述の通り、働き方の実態は個別企業により異なることから、国はもちろんのこと“地域”として共通解へ導くことは難しい。個々の企業に応じて効果を最大化できる改革へと丁寧に導く必要がある。これまで、“地域”は、ワーク・ライフ・バランス推進や女性活躍推進への取組みとして、働き方に関わるさまざまな普及啓発活動に取り組んできた。働き方改革への認知度が高まる今、個別企業にアウトリーチするための“拠点”としての役割を担うことは、「さて、どうすれば?」と戸惑う企業の現場ニーズに合致した取組みと言えよう。今後に期待したい。
また、“地域”が主体となることで、地域の課題解決とリンクさせることが可能となる。もともと、まち・ひと・しごと創生基本方針では、働き方改革を少子化対策として位置付けている。地域の少子化問題の背景には、地域の働き方の傾向が影響しているためだ。地域の問題意識(例えば、若者の非正規雇用、女性の育児離職など)に応じた働き方改革に取り組むことで、地域の課題解決に結び付ける点も、役割として忘れてはならないだろう。
(平田裕子/大和総研 経営コンサルティング第一部 主任コンサルタント)
(本レポートは2017年8月に公開)
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