100%コミットは前時代的 「全員複業ベンチャー」というTOMOSHIBIの新しい働き方:組織づくりの新スタンダード(1/5 ページ)
「複業元年」と言われる2018年。企業も複業推奨を始めているが、実際に社員に複業を許すとなるとモチベーション維持やプロジェクト進行、マネジメントなど、会社側としては数々の課題が浮かんでくる。複業する人が増えていく中で、チームや組織として成果を最大限上げていくためにはどのような組織づくりが必要なのだろうか? メンバー全員が複業をしているという「全員複業ベンチャー」のTOMOSHIBI代表取締役の田中駆さんに話を伺い、これからの組織のあり方を探った。
2018年8月、「ヒト版クラウドファンディング」と称されるプロジェクトの仲間集めプラットフォーム「tomoshibi(トモシビ)」のベータ版がローンチされた。
主にスタートアップの立ち上げ前後など「最初の仲間集め」をユースケースとして想定しているサービスで、プロジェクトを企画した人がページを作成し、SNSのシェアなどを通じて参画者を募る仕組みとなっている。
サービス内容もさることながら、運営する株式会社TOMOSHIBIの「組織構成」もユニークだ。
チームの平均年齢は20代後半、エンジニア、デザイナー、コミュニティーマネジャーなど約10人のメンバーで構成されるが、全員がパラレルキャリアを選択し、複業をしている。しかもそれは、社長も例外ではないという。
果たして、メンバー全員が複業をしていて組織として成り立つのか? 成果を最大限に上げ、成長することはできるか――? 「全員複業ベンチャー」という今らしい組織像について代表の田中駆さんに話を伺い、これからのチームづくりの新スタンダードを探る。
TOMOSHIBI代表取締役 田中駆(たなかかける)。1992年神奈川県横浜市生まれ。横浜市立大学起業戦略コースでマーケティングや商品開発について学び、新卒で福利厚生業界最大手であるベネフィット・ワンに入社。営業、経営企画、DX推進担当を歴任。入社1年目よりパラレルキャリアを実践。フリーのフォトグラファーとしての活動や、学生時代から活動を続けていたカンボジアとのかかわりを本格化させるため、一般社団法人を設立、理事に就任。自身のソーシャル領域での活動などで直面した課題から、仲間集めの自由化、プロジェクト型ワークスタイルの可能性を感じ、2018年よりTOMOSHIBIを創業。趣味はカメラと海外旅行、特にカンボジア
挑戦する人の想いに明かりを「灯す」
――まずは簡単にtomoshibiのサービスの概要と、立ち上げ経緯を教えてください。
tomoshibiを立ち上げたきっかけの一つは、大学時代にNPO法人の代表を務めていたことです。NPO法人は一般企業と違い、メンバーに十分な給料を払うのが難しく、自分自身も仲間集めに苦労しました。だけど、プラットフォームを通じて自分たちの想いやビジョンを広く知らせることができれば、共感し、一緒に活動してくれる仲間を集められるのではないかと思ったんです。
もう一つは、新卒で就職した際、希望を持って社会に出たのに、日々の仕事に忙殺され、自分の「好き」を追い求められなくなった友人たちと接してきたことです。実は自分もそんな一人だったのですが。本当にやりたいことがあるなら、その想いが熱いうちにやったほうがいい。そのためには、お金以上に「そのアイデアいいね!」「もっとこうしたらいいんじゃない?」と励ましてくれる「仲間の存在」が大切。自分のやりたいことに共感してくれる仲間を集める仕組みがあればいいなあと思っていました。
付け加えるなら、「何か頑張りたいんだけど、何を頑張ればいいか分からない」という人たちの存在もきっかけになりました。そういうモヤモヤを抱える人たちと、すでに想いを持って活動している人たちをつなげば、それぞれのモチベーションを生かせると思ったんです。こうしたきっかけが重なって、立ち上げたのがtomoshibiです。
ですから、現在のベータ版では個人利用は無料で、NPOや社団法人、学生団体もできるだけ負担にならず利用できるようにしています。18年末もしくは年度末までに本リリースを予定しており、これからはどういう企業がどういう人を探しているかなどユーザーの動きを見てサービス改修を行い、またオーナー側がユーザーを検索してスカウトできる機能などの追加も検討しています。
また、年明けには企業向けの複業社員採用支援サービス「tomoshibi career」の提供も開始予定です。クラウドソーシングなど、従来的な作業ベースの副業活用だけではなく、より自由度の高い、プロジェクト単位での複業社員の活用を支援していきます。
tomoshibiを通じて、何かやりたいと思っている人たちにとって挑戦のハードルを下げ、もっと自由に挑戦できるような世の中に、そして、アイデアはないけれど頑張りたいと思っている人たちの将来の選択肢が広がる世の中にしたい。ゆくゆくは中小〜大企業にも導入してもらい、大きな組織のチームづくりのスタンダードを変え、会社や雇用に縛られず、プロジェクト単位で働く「プロジェクトワーク」という新しい働き方を推進していきたいと思っています。
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