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“やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)

消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。

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やる気に付け込んでこき使う「やりがい搾取」

 最も広く世界的に使われているモノサシは、社会心理学者クリスティーナ・マスラックらの「マスラック・バーンアウト・インベントリー」です。

 マスラックらはフロイデンバーガーの定義をさらに進化させ、「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つの症状に具体化。「長時間にわたって人に援助する過程で、心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果、極度の心身の疲労と感情の枯渇を示す症候群」と定義しました。

 ……日本流に言えば「やりがい搾取」といったところでしょうか。

 劣悪な職場環境であるにもかかわらず、本人たちの「やる気」に付け込んでこき使う。とりわけヒューマンサービスに関わる仕事に就いている人たちが陥りやすい症状が、「バーンアウト」と呼ばれる病態なのです。

 バーンアウトのいちばんの問題は、「ウツ」と混同されること。

 ウツもバーンアウトも、どちらもストレスが原因で起こる症状ではありますが、そこに至るまでのプロセスと、発症後の対処方法が全く異なります。

 ウツが自分の置かれた状況や遭遇した困難にうまく対処できずに疲弊することが主たる原因であるのに対し、バーンアウトはいわば過剰適応。高く設定された目標を成し遂げようと踏ん張り、いかなる試練にも真っ向勝負で立ち向かい、ひたむきに頑張り続けた結果、エナジーを使い果す。

 燃え尽きる、という言葉通り、正真正銘、ホントに燃え尽きた結果なのです。

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仕事へのモチベーションが高い人ほど、劣悪な職場環境で燃え尽きてしまう危険性が高くなる(写真は記事と関係ありません)

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