“やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。
保育士の7割が「反対」の重さ
念のため断っておきますが、私は無償化に反対しているわけではありません。幼児教育に対する国の投資が世界最低レベルの日本が、無償化を目指すことには大賛成です。でも、今のままでは時期尚早。
保育士さんの数だけでなく、長く働ける職場環境づくりがないまま無償化をスタートさせれば、保育士さんも、子どもも、そしてパパもママも不幸になる。そうなってからでは遅いと言っているのです。
政府は、保育士さんたちの7割が「反対」とした冒頭のアンケート結果を、もっともっと真剣に受け止めるべき。
そして、保育園、幼稚園、学校、介護施設などのヒューマンサービスの現場では、関わる“人(子ども、高齢者)”の家族との関係性が、そこで働く人たちにとって、ときに大きなストレスになり、一方で大きな支えとなることをご家族の方にも分かっていただきたい。
家族との信頼関係があるからこそ、難しい問題を乗り越えることだってできる。できることなら保護者は最強の「保育士の応援団」でいてほしいと、心から願っています。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
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