2015年7月27日以前の記事
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NPOが出費ゼロで4億円の広告効果を達成 鍵はSNSとおにぎり!?有名人に宣伝を頼まない(1/3 ページ)

アフリカの子どもに給食を送るNPOがSNSを使ったキャンペーンで4億円分の広告効果を達成。おにぎりの写真を投稿すれば寄付に。チャリティを「自分事」として捉えてもらうのが鍵。

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 企業がTwitterやInstagramなどのSNSを使って商品やサービスを宣伝するのが当たり前になった昨今。ターゲット広告やキャンペーンなど手法はさまざまだが、多額の費用をかけても必ずしも期待通りの効果が得られるわけではない。何がSNS上で「バズ」るかの予測は今でも難しいからだ。

 一方、自分たちでは広告予算をほぼ使わず、SNSマーケティングを駆使して4億円規模の広告効果を引き出した団体がある。アフリカの子どもたちに給食を寄付するNPO「TABLE FOR TWO(TFT)」だ。営利企業でないため予算に乏しく、しかもチャリティーというSNS上では比較的地味で目立たないジャンルをどうやって「バズ」らせたのか。そこには大手企業出身のママさんマーケッターによる工夫があった。

年間16万枚のおにぎり写真が投稿

 大宮千絵さんはTFTのマーケティング担当者だ。家庭では2児の母でもある。8年間勤めた日産自動車から、マーケティングの能力でNPOに貢献しようと2015年に転職した。転職したのは育児と仕事との両立が目的だったのではなく、「日産時代と変わらず今も忙しい」(大宮さん)という。

 TFTに移った大宮さんが取り組んだプロジェクトが、15年にスタートした「おにぎりアクション」だ。特設サイトにおにぎりの写真を投稿すれば1枚につき5〜10食分の給食がアフリカの子どもに届けられる仕組み。16年からはInstagramやTwitterなどでの投稿もOKになった。

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TABLE FOR TWOの「おにぎりアクション」でInstagramに投稿された写真

 「アフリカの子どもに給食を配る」チャリティーと、現地で食べられていないであろうおにぎりの写真はちょっと結び付きにくい組み合わせに見える。しかしキャンペーンはSNS上でブームに。16年には約11万枚、17年には約16万枚のおにぎり写真が投稿された。半数以上がInstagramで、次いでTwitterが4割を占める。

 大宮さんによると、SNS上での投稿やコメント、「いいね」の件数を集計して広告代理店が通常採用する「広告費をかけてやるなら投稿1件当たりいくらかかるか」の金額を掛け合わせると、年間約4億円の広告費をかけた効果に相当する。18年も10月〜11月にかけてキャンペーンを行っており、投稿数は前年を上回る勢いという。17年は写真投稿を通じて97万5000食(1,950万円相当)の給食がアフリカに届けられた。

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「おにぎりアクション」を手掛けたママさんマーケッター、大宮千絵さん

 大宮さんは日産時代にマーケティング担当として2年間、自社や他社の広告媒体が顧客にちゃんと響いているか調査していた。痛感したのは、企業広告が裸に近いような写真やインパクト重視の文言を盛り込んだ「釣り」系のタイプと、伝えたいことを詰め込みすぎてよく分からなくなったタイプに2極化している点だった。

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