総務や人事が働き方改革の“ボトルネック”になっていないか?:「月刊総務」豊田編集長に聞く(2/5 ページ)
企業で「働き方改革」をリードする立場にある総務部門や人事部門。このミッションを遂行する上で彼ら自身の働き方も焦点になってくる。事情に詳しい「月刊総務」の豊田編集長に勘所を聞いた。
リスクを取って新たな取り組みに踏み出せるか
伏見: そうした外圧を「変化のチャンスだ」とポジティブにとらえて、働き方改革に積極的に取り組む企業もあれば、消極的な企業もあるかと思います。企業が働き方改革を進める上では、多くの場合やはり人事や総務といった管理部門が旗振り役になるかと思いますが、企業によって“温度差”のようなものを感じることはありますか?
豊田氏: 社風の違いはありますが、やはり差を生むのは総務や人事の担当者のマインドでしょうね。総務や人事の仕事は全社に影響を及ぼしますから、関係者の理解を得るのも大変ですし、場合によってはクレームを一身に受けなければならず、相当しんどいはずです。
特に働き方改革に付き物の「リモートワーク」などは、多くの企業では前例がなく、PC紛失による情報漏えいのリスクも高いです。「万が一のときは俺が責任を取る!」とリスクを引き受ける人物がいれば別ですが、どうしても躊躇してしまうのはやむを得ないのかもしれません。
伏見: どの企業も、そうしたリスクをなるべく回避したいので、どうしても先行事例の情報を欲しがりますよね。ITソリューションの導入でも、同様の傾向が見られます。
豊田氏: ただ、リスクを完全につぶすためには多くの時間とコストを要しますから、最終的には「うちの従業員なら、きっと悪いことはしないはずだ!」と性善説に立って、思い切って前に踏み出すしかないような気がします。
後は、リモートワークにせよフリーアドレスにせよ、初めから全社規模の導入を目指すのではなく、まずは一部の部署だけでやってみて、そこで問題をつぶしてから全社規模に拡大していくのがいいと思います。
伏見: いわゆる「スモールスタート」ですね。これもITソリューションの導入では以前から提唱されていますが、なかなか日本企業には根付きません。
豊田氏: 特に総務部門の場合、普段から全社を対象に仕事をしているので、どうしても発想が「全社一律」になりがちなんです。社内から「なぜうちだけなんだ?」あるいは「なぜうちには入らないんだ?」とクレームが来ることを、どうしても恐れる傾向があります。そうした限界を突破するには、クレームを説き伏せられるだけの「強い思い」を総務自身が持っているかが鍵を握ると思います。そういう熱い思いを持っていれば、リスクを自ら取ることにもきっと躊躇しないのではないでしょうか。
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