総務や人事が働き方改革の“ボトルネック”になっていないか?:「月刊総務」豊田編集長に聞く(5/5 ページ)
企業で「働き方改革」をリードする立場にある総務部門や人事部門。このミッションを遂行する上で彼ら自身の働き方も焦点になってくる。事情に詳しい「月刊総務」の豊田編集長に勘所を聞いた。
スピード感を重視した取り組みが求められる
豊田氏: オフィス改革に成功した企業から聞いた話で印象的だったのが、「なるべく制約を設けないようにしている」ということでした。現場から「この施設はどう使えばいいのか?」という問い合わせがあった場合、「こう使ってください」「こう使ってはダメです」と答えるのではなく、極力「ご自由にどうぞ」と答えるようにしているとのことでした。こうすることでユーザーが使い方を自ら考えて工夫し、中には総務が思いもよらなかったような斬新な使い方を現場で考え付くこともあるそうです。これは、従業員の自立性を育むという意味でも重要なことだと感じました。
伏見: 制度やルールを新たに作ると、得てしてその枠に無理やりはめ込むような施策に終始しがちですが、それでは自立性も育まれませんし、結果的に変化も起こりにくくなってしまいますよね。働き方改革は確かに変化のきっかけの1つではありますが、総務部門の考え方ひとつで、変化を起こしやすい文化になるか、そうでない社風になるかが決まってくるのかもしれません。
豊田氏: これまでも変化のきっかけはあったのかもしれませんが、技術革新のスピードが年々増している今日では、ちょっとの出遅れが致命的になります。そういう意味では、今回の働き方改革というきっかけを逃すと、世の中の流れから大きく取り残されることになりかねません。それに、管理部門の仕事に「しばらく寝かせて熟成すれば良くなる」ようなものはほとんどありません。とにかく早め早めに着手することです。
伏見: 私自身も取材を通じてさまざまな企業の現場部門の方々とお会いすると、管理部門の変化のスピード感が足りないという苦言をよく耳にします。新しい制度1つ作るにしても、1年以上同じ議論を繰り返していることも珍しくありません。
豊田氏: 総務部門の仕事には、社員証の紛失対応やオフィスの電球切れといったように、「重要度は低いが緊急性が高い仕事」が日々大量に発生します。それらに忙殺されていると、真の働き方改革の検討といった「重要度は高いが緊急性は低い仕事」に割く時間がなかなか確保できません。
こうした状況を改善するには、先ほど述べたように現場と総務の接点を効率化したり、BPOサービスを有効活用したりするなどして、「重要性は低いが緊急性は高い仕事」を効率化・省力化していく必要があるでしょう。ひょっとしたら、こうした「総務部門の改革」こそが、今最もスピード感が求められる変化の取り組みなのかもしれません。
伏見: ありがとうございました。
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