幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の“伸びしろ”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
建設途中で放棄され、完成に至らなかった「未成線」。現在でもその残骸は各地に残っている。未成線の活用を語り合う「全国未成線サミット」が福岡県で開催された。未成線に秘められた、観光開発の「伸びしろ」とは?
岩日北線(山口県岩国市)
錦川鉄道の「とことこトレイン」として知られている。岩日線は山陽本線の岩国と山口線の日原駅を短絡する陰陽連絡線として計画された。このうち、岩国駅の隣の川西駅から錦町駅までは国鉄時代の63年に開通した。錦町駅から北側の延伸区間が「岩日北線」と呼ばれた。
4キロ超のトンネルなども開通し、路盤もほとんど完成したけれども、国鉄赤字問題によって80年に工事凍結。開業済み区間も廃止論議を経て、第三セクターの錦川鉄道となった。このうち、岩国市内の雙津峡温泉付近までが遊覧鉄道の「とことこトレイン」となった。タイヤで走るトレーラーが客車をけん引して走る。毎週末や学校の長期休み期間の運行で、観光シーズンには錦川鉄道本体よりも集客しているという。
高千穂あまてらす鉄道(宮崎県高千穂町)
JR九州の高千穂線の廃線でトロッコ車両を運行している。軽トラックのエンジンを積み替えた機関車で客車をけん引する。現役時代、水面から高い位置にあるという高千穂橋梁を通過するなど、この区間だけを取り上げれば廃線観光である。ロストライン協議会にも参加していた。しかし、高千穂線は国鉄時代に高森線(現・南阿蘇鉄道)と接続する計画だった。つまり、高千穂と高森を結ぶルートを視野に入れると未成線の仲間入りとなる。高千穂あまてらす鉄道の目標は廃線観光ではなく、鉄道路線復活だ。
北九州銀行レトロライン(福岡県北九州市)
「門司港レトロ観光線潮風号」として知られている。旧鹿児島本線の貨物支線を再利用した路線だ。ルートはJR門司港駅近くの九州鉄道記念館から関門海峡めかり駅まで。南阿蘇鉄道から譲り受けた機関車と、島原鉄道から譲り受けたトロッコ客車で構成されている。こちらもどちらかというと廃線観光の分野である。運行は平成筑豊鉄道が行っており、門司港レトロ地区と関門海峡を結ぶ列車は観光客に人気だ。
「北九州銀行レトロライン」は未成線ではないけれども、平成筑豊鉄道沿線の会合という意味合いの参加かもしれない。門司港トロッコ応援団と赤村トロッコボランティアを掛け持ちする人もいる。赤村トロッコと組み合わせた観光アピールもできるだろう。
関連記事
- 廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命
全国で廃線利活用事業を営む団体の連携組織「日本ロストライン協議会」が設立総会を開いた。4月9日の時点で15団体が参加している。廃止された鉄道施設を観光や町おこしに使おうという取り組みは、鉄道趣味を超えた新しい観光資源を作り出す。 - 自動運転路線バス、試乗してがっかりした理由
小田急電鉄が江の島で実施した自動運転路線バスの実証実験。手動運転に切り替える場面が多く、がっかりした。しかし、小田急は自動運転に多くの課題がある現状を知ってもらおうとしたのではないか。あらためて「バス運転手の技術や気配り」の重要性も知った。 - 情緒たっぷりの「終着駅」 不便を魅力に転じる知恵とは
広島県のJR可部線が延伸開業してから1周年を迎え、記念行事として「終着駅サミット」が開催された。終着駅が持つ魅力と役割を再認識し、終着駅を生かしたまちづくり、沿線の活性化を考えるという趣旨だ。情緒だけでは維持できない。維持するためにまちづくりが必要。それは日本の地方鉄道の縮図でもある。 - 「そうだ 京都、行こう。」はなぜ25年も続き、これからも続いていくのか
JR東海のキャンペーン「そうだ 京都、行こう。」が25周年を迎えた。なぜこのキャンペーンは始まり、今も続いているのか。京都がJR東海にとって重要だから、というだけではない。新たな目的もありそうだ。 - JR北海道の“大改造”構想 「新・新千歳空港駅」「ベースボールパーク新駅」
新幹線札幌駅が決着したJR北海道に新たな動きがあった。北広島市のベースボールパーク新駅構想に引き込み線方式の大胆案、新千歳空港駅も大改造構想が立ち上がる。JR北海道だけではなく、北海道全体にとっても良案だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.