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“あ・うん”の呼吸はロジカルシンキングを超えるのか? 日米企業の生産性:幸せと生産性を考える(3/3 ページ)
米国企業と日本企業では生産性の高め方が異なるという。双方の組織で実際に働いた筆者が解説する。
暗黙知を形式知化するのに加えたい要素
実は、日本企業が1990年代前まで強さを誇ったのは、自前組織の密度の濃い関係性の中、「暗黙知」を“あ・うん”の呼吸でしっかり共有してきたことにありました。ただ、それには膨大な時間と手間が必要であり、また偶発性の要素も否めず、スピードとクオリティの求められる現在の時代・環境下でそのまま復活させるのは非現実的です。
そこに「形式知」化のプロセスが求められますが、加えるべき要素は2つあります。1つは客観的・論理的に考えることのできる思考力です。すでに日本企業はこの30年間にわたりロジカルシンキングをもう十分に学んできたではありませんか。
もう1つは、組織をオープンに開き、多様性を取り入れていくことです。同じ組織の中にいるとどうしても暗黙の共有事項が増え、形式知化する必要を感じなくなりがちです。多様性とは、異質性の許容とも言えます。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーという存在は、外部から異質性を持ち込む存在とも言えます。
組織の内部に閉じこもらず、外部のメンバーも極力巻き込みながら、それぞれの思考や行動を掛け合わせて、その総和を超えて予期せぬエネルギーや結果を生み出す「創発」に踏み出すことが、日本企業の有力な選択肢の1つになると私は考えます。
今回は、米国企業と日本企業の生産性の質の上げ方に言及しました。どちらの進め方が自分やチームにとって「幸福」か、考えてみると面白いかもしれません。
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