どうなる4K放送!? 開始まで1カ月を切ったが認知度は低いまま……:4K(4/4 ページ)
2018年12月1日午前10時から「新4K・8K衛星放送」がスタート。もう1カ月もないが、業界内では頭の痛い問題がある。それは、4Kに対する認知度が依然として低いことだ。
地デジ移行とは違う
11年の地上デジタル放送(地デジ)への移行の際には、すべてのテレビが変わる必要があったため、日本のすべての家庭を巻き込んだ買い換え騒動が起こった。しかし今回は、既存の地デジ放送は継続しながら、4Kという新たな放送が加わるという構図のため、すべての人が買い換える必要がない。従来の地デジ放送のままでいいという人にとっては、興味がない話だといえる。
その点では、地デジ移行時のような大規模な需要が見込めず、19年秋の消費増税前までは、4Kテレビの販売には弾みがつきにくいとの見方も出ている。
そして、今後、4Kテレビの普及を加速させるには、地デジの時以上に、新たな放送による画質の良さを訴求する必要があるといえる。
放送が開始される12月1日午前10時からは、ビーエス朝日、BS-TBS、BSテレビ東京、ビーエスフジのBS民放4社が共同で、「BS4K開発"初"生特番〜日本で最高に美しい映像お見せします〜」を生放送。滝川クリステルさんを進行役として、午前9時45分から、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる開始記念の火入れ式の様子を従来の2Kで生放送。午前10時になると4K放送に切り替わり、4Kならではの美しい放送への変化を体感できるようにした。
A-PABの福田俊男理事長は、「2011年に地上デジタル放送が開始したときは、『デジタルテレビ新時代』をキャッチフレーズとしたが、今回は、『こんどのテレビは別世界』を掲げた。別世界の高画質を多くの人に体験してほしい」と語る。
4K放送は、これまでにも、CSやケーブルテレビでは視聴できたが、今回の新4K8K衛星放送では、日本全体の75%にあたる4000万世帯での視聴が可能になる。
衛星を利用した4K/8K放送の実用化は、日本が世界に先駆けたものであり、この動きは世界中からも注目を集めている。
4K放送や4Kテレビの認知度はまだ低い。そして、テレビやチューナー、アンテナなどを巡る混乱もありそうだ。
地デジ移行のときには、アナログ放送の終了時に向けて、需要のピークが生まれたが、新4K・8K衛星放送は、むしろ放送開始時からがスタートになる。だが、今のままでは混乱が発生するのは明らかだ。市場に混乱が発生しないように4Kテレビを普及させる仕掛けが求められる。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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