参加者殺到、「コンプライアンス落語」とはどんなもの?:笑いながら学ぶ(1/4 ページ)
コンプライアンスに関わる事件は日常茶飯事のように起きている。だが、これを社内に徹底しようとしても、難しい用語が多かったり、法律に照らし合わせる必要があったりしてハードルが高い。これを分かりやすくしようと作られたのが「コンプライアンス落語」だ。
コンプライアンスは、企業にとって、避けては通れない重要なテーマである。
社内で起こるパワハラやセクハラ、SNSの情報発信における不適切発言による信頼の失墜、個人情報の適切な管理が行われないことでの情報漏えい、情報開示の遅れによる社会問題化など、コンプライアンスに関わる事件は、残念ながら日常茶飯事のように起きている。
だが、これを社内に徹底しようとしても、難しい用語が多かったり、法律に照らし合わせる必要があったりするため、どうしても堅苦しい雰囲気になり、社内セミナーを開催しても、積極的に参加しようという社員が少ないのが実態だ。
そうした中、数多くの東証一部上場企業などが採用するコンプライアンス活動支援サービスを提供するハイテクノロジーコミュニケーションズが、社内にコンプライアンスを浸透させるための新たな手段として開始したのが「コンプライアンス落語」だ。
1月30日、4回目となるコンプライアンス落語が、東京・浜松町のプロネクサス本社で開催され、情報開示編となる新作「つつみ隠し」を、若手落語家の春風亭昇也さんが初披露した。実際に、コンプライアンス落語の会場を訪れてみた。
タイムマシンを商品化した会社が題材
会場を訪れると、オフィスの会議室の奥に、高座が用意されていた。約100人を収容できる一般的な大会議室だが、そこに高座があるとちょっとした違和感がある。そして、流れている音楽も落語の出囃子だ。
しばらく聴いていると、会議室にいることを忘れて、少し楽しい気分になってくるが、違和感は拭いきれない。というのも、ここにやってくる人たちは、紺のスーツにネクタイ、黒い皮の鞄を持った男性の姿が多く、セミナー会場であることがヒシヒシと伝わってくるからだ。聞くと参加者の多くは、法務部門や総務部門に勤務する人たちだという。
高座に上がった春風亭昇也さんは、まじめな顔をした人が多い会場を見回しながら、「今日のお客さんを見ると、やりづらいのは最初から分かっている」と切り出し、「この場では、笑わないことがコンプライアンス違反になる」と語って場を和ませる。
最初の15分は、コンプライアンスとは関係がない小ばなしを続け、徐々に会場からの笑いが大きくなり始めたころを見計らって、後半の15分間でコンプライアンス落語の新作「つつみ隠し」を披露した。
つつみ隠しは、過去に行くことができるタイムマシンを商品化した企業が舞台。大ヒット間違いなしと期待していたところに、本体に使っていたネジに欠陥が発生。その対応をどうするかを迫られる社長の話だ。こんな欠陥は大したことがないので商品を回収する必要はないとする関西弁の副社長、このままにしておくと会社の信用問題に発展する可能性があるため、しっかりと情報開示すべきだとする女性常務の間に挟まれ、それぞれの意見に左右されながら決断に悩む社長の姿がおもしろおかしく描かれている。
会場は笑い声に包まれる中、参加者の多くは、情報開示に関して、同じようなやり取りが社内で行われる可能性を感じていたようだ。
リラックスした気分の後、コンプライアンスセミナーの講師が登場し、今度は真面目な雰囲気の中で、コンプライアンスを学べるという仕組みだ。
ハイテクノロジーコミュニケーションズの岡村克也社長は、「コンプライアンスに対する関心が高まる一方で、担当者にとっては、何から手を付けていいのか分からないという課題がある。また、社員にとっても、コンプライアンスの大切さを理解したくても、堅苦しいとか、聞き飽きたといったネガティブな感情があり、教育や研修の効果が限定的となりやすい。教育や研修などの導入部分に『コンプライアンス落語』を活用することで、ネガティブな感情を取り除くことができ、コンプライアンスに目を向けてもらうためのきっかけ作りになると考えた。コンプライアンスの良いこと、悪いことを印象深く、面白く伝えることができる」と、コンプライアンス落語を始めた理由を振り返る。
さらに、リラックスすると記憶力が上がるとも言われており、落語を入れることでその後のセミナーにもプラス効果を生むという狙いもあるという。
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