築46年なのに、なぜ「中銀カプセルタワー」に人は集まるのか:水曜インタビュー劇場(4.5畳公演)(5/7 ページ)
新橋駅から徒歩5分ほどのところにある「中銀カプセルタワービル」をご存じだろうか。立方体の箱がたくさん積まれていて、丸い窓が並んでいる。1972年に建てられたこのビルが、数年前からジワジワ人気が出ているのだ。その謎に迫ったところ……。
カプセルを交換できなかった事情
前田: 建築家の人からはこのような質問が多いですね。「この建物は『メタボリズム』(新陳代謝)という建築理念を取り入れているんですよね。カプセルは着脱可能なのに、なぜこれまで一度も交換していないのでしょうか?」と。
土肥: ワタシは建築家ではありませんが、なぜ交換していないのでしょうか?
前田: 設計を担当した黒川さんは、「25年に一度のペースでカプセルを交換しなければいけない」と考えていらっしゃったようですが、まだ一度も交換していません。なぜか。
大きな理由が2つあって、1つは所有者がたくさんいるから。建物は中銀グループが施工しているので、中銀グループがすべてのカプセルを所有すればよかったのかもしれません。そうすれば、25年が経ったときに「みなさん、一度出てくださいね」と言えば、カプセルを交換できたかもしれません。ただ、完成当時、賃貸だけでなく分譲としても販売していたので、たくさんのオーナーが誕生してしまいました。結果、オーナーの意見がまとまらず、交換することができなかったんですよね。
もう1つの理由は、資金面が不足しているから。発売当初、1カプセルを交換するのに、500〜600万円かかると試算されていました。ただ、いま交換するとなると、1000万円ほどになる。先ほどもお伝えした通り、この建物は140カプセルあるので、オーナーの同意を得るのが難しかったんですよね。
土肥: 「自分のカプセルだけでも交換してよ〜」といったオーナーもいたのでは。部分交換はできないのでしょうか?
前田: カプセルはフックに載せて、上部の4カ所をネジで固定しているんですよね。また下層階から上層階にかけて順番に設置されているので、1つだけ外すのは難しい。例えば、5階に住んでいる人が「自分のところだけ交換してください」と言っても、6階以上のカプセルを外さなければいけないので、該当するオーナーの同意を得るのが難しい。
土肥: ということは、最上階に住んでいる人はどうでしょうか? 誰にも迷惑をかけずに「ポコッ」と外すことができるはず。
前田: 理論上は可能なのですが、最上階の場合、クレーンが必要になる。そうなると、1つを交換するために莫大な資金が必要になるので、これも実現することは難しい。
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