モヤモヤ抱えるミドルへ 500人が人生相談に訪れた「昼のスナック」の秘密:「ママ」に会ってきた(2/4 ページ)
平日の昼間にさまざまな人が訪れる「スナックひきだし」。2017年6月に営業を始めてから、口コミやSNSを通じて延べ500人が来店した。みんなここで何をしているのか。「ママ」を務める木下紫乃さんに話を聞いた。
大企業のミドル世代に「元気がない」
なぜ木下さんはこのような場所をつくったのか。キャリア支援の会社を経営しているが、意外にも、自分自身は「キャリアデザインなんか全く描いてこなかった」と人生を振り返る。
大学卒業後にリクルートに就職して7年働いたが、体を壊して退職。その後、数社を転々とし、企業の人材育成研修を支援する会社で約10年働いた。その合間には3回の結婚も経験。2回目の結婚を機にドイツに移住したこともあったが、うまくいかずに1人で帰国した。その直後は「住むところもなく、友人の家に居候していた」状態から、つてをたどって仕事を得たこともあったという。
その後、人材育成支援の会社に勤めて10年がたったころ、45歳で大学院に入学。働き方やキャリア教育を研究し、起業に至った。木下さんは「行き当たりばったりの人生ですが、いろんな人に助けられてやってきました」と振り返る。
起業のきっかけは、人材育成の会社で働いていたころの経験だ。
顧客はメガバンクや航空会社など、名の知れた大手企業が多かった。そういった企業でキャリアを積んできた、一見恵まれた人たちと接する中で、強く感じたことがある。「この人たち、何でこんなにしんどそうなんだろう」。閉塞感が漂っていた。
「私を含むミドルシニア世代は、世の中がどんどん変わっていくのに、自分をアップデートできない。20〜30代は変化を受け入れる心構えがあるのに……。世の中の変化を感じ取っていても、どうすればいいのか分からない、会社もその世代をサポートしてはくれない。そんなモヤモヤとした悩みを抱えている人が多いように感じます」
そんな思いを抱いた木下さんは、ミドルシニアのキャリア構築をサポートすることを決意。知人と2人でヒキダシを設立した。
ところがいざ事業を始めてみると、セミナーや研修を開いても、自分たちが支援したい世代が来ない。「人から教えられたり、否定されたりするのが嫌な人が多いのかもしれません」
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