モヤモヤ抱えるミドルへ 500人が人生相談に訪れた「昼のスナック」の秘密:「ママ」に会ってきた(3/4 ページ)
平日の昼間にさまざまな人が訪れる「スナックひきだし」。2017年6月に営業を始めてから、口コミやSNSを通じて延べ500人が来店した。みんなここで何をしているのか。「ママ」を務める木下紫乃さんに話を聞いた。
スナックなら、気軽に来てもらえる
どうすれば自分たちの取り組みがミドルシニア世代に届くのか。木下さんは、大学院の同級生だった岡田真幸さんに相談した。岡田さんは木下さんと同世代。大手メーカーに約20年間勤めた後、大学院に進学。同時に、麻布十番で「Charlie's Bar(チャーリーズバー)」というバーを始めた異色の経歴の持ち主だ。
岡田さんと話す中で「バーやスナックなら、その世代の人が来やすいのでは?」と思うようになり、「それまで考えてもいなかった」方法を模索するようになった。最初は「スナックなんて、ありえないか」と思ったが、自分自身が参加した、他人に目標を立ててもらうワークショップ「タニモク」でも背中を押され、本気になった。
木下さんの思いに共感してくれた岡田さんの協力で、Charlie's Barを借り、不定期でイベントを開くことにした。17年6月、バーがにぎわう前の午後7時〜9時半に営業する「スナックひきだし」を始めた。コンセプトは「40歳以上のモヤモヤを解決」。Facebookのみで告知した。あまり構えずに来てもらって、リラックスしておしゃべりしてもらいたかった。
反響は想像以上だった。12席あるカウンター席が埋まるほどの人が毎回来てくれた。しかし、回を重ねるにつれて、家庭の事情などで「夜に来られない人」の声も聞こえてくるようになる。また「40歳以上」という条件から外れる人からの参加希望も寄せられた。「もっと来やすい場所」にすることが必要になった。
そこで、17年8月から、毎週木曜の午後1時〜6時に開催日時を固定。参加者の制限もなくし、幅広い人が気軽に来られるようにした。Facebookのみという告知方法は変わらないが、1年強で約60回、休まず開催できている。SNSや口コミがきっかけとなり、来店した人は延べ500人に上る。
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