公務員65歳定年制の導入は「若者の賃金搾取」と「解雇規制緩和」の序章だ:美名のもとに遂行される「政府シナリオ」(5/5 ページ)
政府は公務員の定年引き上げを検討している。この動きが民間にまで波及すれば法定定年年齢の65歳への引き上げにつながり、70歳までの雇用確保を義務付けるという「政府のシナリオ」が現実味を帯びつつあるのだ。その先にあるのは……。
「若手の人件費削減」は不可避 解雇規制の見直しも
それでも国が強制的に70歳まで雇用を促した場合はどうするのか。先述の人事部長は「賃金制度の抜本的な改革が不可欠だ」と指摘する。また、別の建設関連企業の人事部長は、若者の人件費削減が現実になる可能性にも触れた。
「再雇用の社員に限らず、現役世代も含めて今の年功賃金から完全成果主義に転換し、成果に応じて給与が増減する仕組みに変えていく必要がある。いずれにしても高齢者を雇うためには現役世代の人件費削減は避けられない。また、これまでは法律があるから60歳以上の人たちを仕方なく福祉的に雇ってきたが、増え続けるとお荷物扱いされるだろう。場合によっては60歳以降も残すかどうかを早い段階で選別し、残さない人は早めに退職してもらうことも考えないといけない」
仮に60歳から70歳まで定年や雇用確保義務が延長されると、そのための人件費を捻出するため、現役世代の賃金の削減、あるいは現役世代のリストラが起きる可能性が高いのだ。
東京大学の川口大司教授(労働経済学)も、こう指摘している。
「高年齢者雇用安定法を改正し70歳までの雇用確保を企業に求めていくことになると、いくつかのハードルが出現する。そもそも企業が高年齢労働者の雇用確保義務に対して抵抗を示すのは、定年をもってしかスムーズな労働契約の終了ができないと感じているためだ。これが70歳までの雇用確保が求められるとなれば、解雇規制見直し論議は避けて通れないだろう」(『日本経済新聞』2018年10月4日朝刊「経済教室」)
政府の解雇規制の検討は現在、保留されたままではあるものの、いずれ議論が再燃し、その影響が現役世代に飛び火する可能性も否定できない。
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