「被災時の赤ちゃんの命綱」液体ミルクは普及するか グリコが発売へ:熊本地震で脚光浴びる(2/2 ページ)
江崎グリコが乳児用液体ミルクを発売する方針を発表した。粉ミルクと違ってお湯が要らず被災時の活躍が期待されるが、実際に日本で受け入れられるかは未知数。
真のニーズは未知数
ただ、日本では基本的に乳児を母乳か粉ミルクで育てる習慣が一般的で、液体ミルクがどれだけ受け入れられるかは未知数だ。実際、9月の北海道地震の際は被災地に支援物資として送られた液体ミルクがほとんど使われなかったとされる。江崎グリコの担当者は「まずは自治体で備蓄してもらいながら、賞味期限の近くなった商品を保育園などに配って普及につなげていく」と説明する。
平時にどれだけ需要があるかも焦点になってくる。別の乳業メーカーの担当者は「備蓄用向けだけだとちょっとニーズが狭いようにも思える。どれだけ需要があるかどうかはまだ見えていないのでは」と話す。少子化が進み乳児の数が減る中、粉ミルク市場のパイの一部を奪うだけ、という見方も業界では存在する。
液体ミルクの商品化に向けた法整備を省庁などに訴えてきた一般社団法人・乳児用液体ミルク研究会代表理事の末永恵理さんは「フィンランドでは液体ミルクが主流だが他の欧米諸国では粉ミルクがメーンで、外出時などサブの用途で液体が使われている」と説明する。日本でも高価格帯のレトルトの離乳食が外出時に便利なことからよく使われており、同様に液体ミルクも利便性から支持される可能性があるとみる。
一方で末永さんは「商品だけでなく(使い方などの)情報も広まらないと消費者は使おうとしない。周知がかなり重要になる」と指摘する。母乳による育児を推進するWHO(世界保健機関)の定めた国際基準に基づいて粉ミルクや液体ミルクの広告は現在、日本でも事実上規制されている。「公的な立場から、液体ミルクがこういったものだと正しい説明を広める必要がある」(末永さん)。
関連記事
- 大災害時に訪日客をどう守るか 西日本豪雨・大阪府北部地震で考える
豪雨や地震など大災害時、訪日客をどう守るのかインバウンド情報の専門家に聞いた。言葉の壁が浮上するほか、保険未加入の人の多さやデマの危険性も問題に。 - 北海道地震でデマ拡散が止まらない真のメカニズム
北海道地震で断水や携帯電話の不通といったデマがSNS上で流れている。被災時は心理的にデマを信じやすい上、lineでの友人間のやりとりで尾ひれが付きTwitterで拡散されるようだ。 - 10年間宣伝ゼロのマーガリン 売り上げが突如6倍になった真の理由
たらこ入りマーガリンが発売10年目に宣伝無しでメーカーも困惑する謎のヒット。Twitterがきっかけだが背景にはそもそもSNSで興味をひきやすい商品の魅力があった。 - 「まるでクリーム」「夜食向け」 森永の常識破りヨーグルト、パルテノが売れた訳
濃厚さが売りの森永乳業のギリシャヨーグルト「パルテノ」が人気。構想後7年でヒットという気長さや逆張りのマーケティング戦略が奏功したようだ。 - ほうじ茶ブーム生んだマーケッター 秘訣は「お茶との恋愛」!?
ほうじ茶ブームを仕掛けたペットボトル商品「加賀 棒ほうじ茶」。誕生の背景には地域に埋もれていた素材を掘り起こし地元企業を説得したマーケッターの「愛」があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.