ほうじ茶ブーム生んだマーケッター 秘訣は「お茶との恋愛」!?:三顧の礼で生産者を説得(1/3 ページ)
ほうじ茶ブームを仕掛けたペットボトル商品「加賀 棒ほうじ茶」。誕生の背景には地域に埋もれていた素材を掘り起こし地元企業を説得したマーケッターの「愛」があった。
ほうじ茶がブームだ。2017年ごろからペットボトル入り飲料だけでなく他のジャンルの商品にも波及。スターバックスの「ほうじ茶 ティー ラテ」や、ハーゲンダッツジャパンのアイスクリーム「ほうじ茶ラテ」などが登場。コンビニ各社や菓子メーカーもほうじ茶味のスイーツを発売した。
このブームの火付け役とされる商品が、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(ポッカ)が15年秋に発売したペットボトル飲料「加賀 棒ほうじ茶」。16年にはシリーズ総計で約960万本、18年は2400万本超の売り上げを見込むヒット商品だ。同社によるとほうじ茶市場全体も拡大を続けており、17年は11年比で約70%も伸びたという。
全国各地を巡る「お茶ハンター」
ただポッカによると、もともとほうじ茶はお茶の業界において、あまり品質の良くない茶葉を焙煎して作られるといった少しネガティブなイメージを持たれていた素材だったという。そして同社は飲料メーカーとしては業界8位と決して圧倒的なシェアではない。一筋縄ではいかないこのほうじ茶プロジェクトに挑戦したのが素材飲料グループのリーダーを務めるマーケッター、鶴谷哲司さんだ。
鶴谷さんは北は北海道、南は沖縄・宮古島まで多くの生産地に足を運び、新たなお茶になりそうな素材を集め続けている「お茶ハンター」。彼をよく知る取引先は「鶴谷さんの仕事は恋愛と一緒」と説明する。ほうじ茶ブームの土台を作り上げた鶴谷さんの「お茶との愛の物語」を追った。
もともとポッカは15年発売の「にっぽん烏龍」を皮切りに、国産原料にこだわったペットボトルの無糖のお茶のシリーズを企画していた。その中で鶴谷さんは、13〜14年ごろには既に市場でほうじ茶ブームの前兆のような動きがあるのに着目。同社によると、無糖のお茶の市場シェアは緑茶が約半分を占めるのに対しほうじ茶は4%程度。しかし今回のプロジェクト以前でも、同社のほうじ茶が特に屋内の自動販売機で緑茶の売り上げを上回る傾向がよくみられたという。
ほうじ茶に商機を見いだした鶴谷さん。中でもお茶を扱う業者などに聴き取りをする中で、石川県産の加賀棒ほうじ茶が「全国随一」の品質と評価されていることを知った。茶葉の茎の部分だけを焙じることで香り高いのが特徴。おりしも15年が北陸新幹線の開通する年ということもあり、北陸に注目が集まるタイミングでの発売を狙った。
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