どん底から復活したメガネスーパーは、なぜ「安売り」と決別できたのか:8年連続赤字企業を救った戦略(3/4 ページ)
わずか数年前、倒産寸前まで追い詰められていたメガネスーパーの「V字回復」が注目を浴びている。どのようにどん底からはい上がったのか。失敗と復活の背景には、眼鏡業界のビジネスモデルの変化を踏まえた戦略の転換があった。詳しく解説する。
「レンズ有料化」が受け入れられた理由
レンズを有料にすると、顧客にとっては急激な値上げになる。「お客さまが来なくなってしまう」と、現場の不安も大きかった。低価格の眼鏡が当たり前のように浸透している中で、星崎氏でさえもなかなか踏み切れなかった一手だったという。
星崎氏はその部分に着手することを決めると、すぐに結論を出さずに、まずは社内で議論をさせた。その結果として、「もう他に方法はない。レンズ代を有料にするしかない」という結論を導き出した。
そして14年6月、レンズ代の有料化に踏み切った。業界の関係者の間では「デフレの時代にどうかしている。ついに狂ったか」とささやかれたという。
しかし、この施策を「単なる値上げ」にしないための土台づくりはすでに進んでいた。他のどの店よりも「健康」に関するサービス品質を高めるため、「検査」を充実させたのだ。単なる視力検査ではなく、目の機能を測る眼体力や眼年齢、生活環境なども考慮した検査を実施し、最適な眼鏡を提案する。検査は最大52項目で、1時間かける。他社を大きくしのぐきめ細かさを実現していた。
そのメッセージは顧客に伝わった。自分にぴったりの眼鏡を提案された顧客の満足度は高く、メインターゲットの中高年を中心に支持されたのだ。15年春には、無料で実施していた検査も有料化した。1000円、2000円、3000円の3段階で、ニーズに合った検査を選んでもらえるようにした。
「プロとして対価をいただくべき、という考え方です。社員の専門知識がメガネスーパーの価値。そこを安売りしてしまうと、お客さまの不利益につながってしまう」(斎藤氏)
1年間の保証サービス「HYPER保証」に加え、月300円で3年間保証する「HYPER保証プレミアム」など、付帯サービスも充実。HYPER保証プレミアムでは、3年間保証を利用しなかった場合、1万800円分の商品券がもらえる。買い替えの際にまた来店してくれるという好循環が生まれている。コンタクトレンズ用品を定期的に配送する「コンタクト定期便」の利用者も増え、収益に貢献しているという。
現在の客単価は3万6000円。赤字だった11年には1万8000円にまで落ち込んでいた。今では、新規客の半分ほどは低価格店から移ってくるという。メガネスーパーのサービスを求めて来店する人が増えているのだ。
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