どん底から復活したメガネスーパーは、なぜ「安売り」と決別できたのか:8年連続赤字企業を救った戦略(4/4 ページ)
わずか数年前、倒産寸前まで追い詰められていたメガネスーパーの「V字回復」が注目を浴びている。どのようにどん底からはい上がったのか。失敗と復活の背景には、眼鏡業界のビジネスモデルの変化を踏まえた戦略の転換があった。詳しく解説する。
将来の成長を見据える「次世代型店舗」
メガネスーパーが次の成長エンジンとして位置付けているのが「次世代型店舗」だ。
17年11月に高田馬場本店(東京都新宿区)をリニューアルし、次世代型店舗の1号店をオープンした。そこには、夜間視力検査など、よりきめ細かい検査をするための新たな機器を導入。また、専門的な研修を受けたスタッフが施術するリラクセーションの専門ルームも設けた。血行を促進して、より正確な検査結果を得ることが狙いだ。
高田馬場本店のリニューアル後、客数も客単価も大幅に増えた。手応えをつかんだことから、次世代型店舗へのリニューアルや新規出店を急速に進めている。18年内には約30店舗にまで増える計画だ。
その成果はすでに表れ始めている。次世代型店舗の客単価は、全体を大きく上回る4万5000円。高田馬場本店に至っては5万円以上だという。来期には、全体の1割を次世代型店舗にする計画だ。
加えて、M&Aによる事業拡大にも着手している。17年11月、持ち株会社のビジョナリーホールディングスを設立し、体制を整えた。
これまでに傘下に加えた企業の一つが、海外有名ブランドの総代理店となっているVISIONIZE(ヴィジョナイズ)。ファッション性の高い商品展開や卸販売事業といった、これまでのメガネスーパーにはなかった戦略を取り込み、事業基盤の拡大を図る。
さらに力を入れるのが、地方に地盤がある眼鏡チェーンのM&Aだ。低価格店の広がりや後継者不足などで眼鏡店の廃業は増えている。「地域の目の健康を守る」という志を共有できる企業に対して、メガネスーパーの経験やノウハウを伝えていく。
体の一部とも言える眼鏡に求めるものは、人によって大きく異なる。年齢や使い方、目の状態、価値観などは多様だからだ。メガネスーパー復活の裏には、自社が担うべき役割を見極め、それを貫き通した覚悟があった。
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