「勝手に“天職”を見つけ出す転職AI」が進化 辞めたいタイミングを“予知”!?:SNS上のほのかな「不満」検知(2/2 ページ)
AIを活用した転職サービス「scouty」にエンジニアの「転職意欲」を予測する機能が実装。企業は欲しい人材が本格的な転職活動に移る前にスカウトできる。
「いつ転職意欲がmaxになるか」AIがグラフ化
2つ目は、TwitterなどSNS上で転職に少しでもつながるような「不満」をほのめかせた書き込みだ。同社によると、必ずしも「転職したい」「辞めたい」といった直接的なワードを単に検索している訳ではない。例えば、「給料上がらないかな」「相談相手いないのがつらい」などといった間接的な不満や不安をにおわす書き込みでも、「転職可能性を示唆するツイート」として検出される。
島田さんによると、実際に転職した人の転職前後の書き込みをビッグデータとしてAIに学習させることで、転職したい人特有の文章の傾向を把握して検知しているという。さらには、キャリアイベントへの参加といった転職をにおわせる行動がSNS上で確認されたときにもアラートが鳴る。
同社はこうしたSNS上での実際の行動分析だけでなく、対象者の条件に合わせた「いつくらいに転職したい気持ちが盛り上がるのか」という予測グラフも作成している。例えば「エンジニアで社会人3年目、今は1社目の会社に勤めている人はその後、2〜3年で辞める可能性が高い」といった具合だ。やはりSNSから集めた過去のエンジニアたちの転職実績のデータを集め、似た経歴の対象者の転職時期をグラフの上がり下がりで予測する。
実際には、エンジニアが転職意欲の最高潮を迎えている段階では既に活動を開始している可能性がある。そこでscoutyでは意欲が高まりきる直前あたりを見計らってアラートを企業の人事に鳴らす。企業側は、ひそかに目を付けている採用候補者の「転職意欲が高まってきたが、本格的な行動にはまだ移していない」段階を狙ってスカウトのメールを送ることができる。
本機能は搭載されてまだ数カ月だが、企業の人事からの評判は上々のようだ。オンラインストアのサービス運営会社などを傘下に持つhey(東京・渋谷)の近藤愛(まな)さんは「これまでは対象者のSNSページを『お気に入り』に登録して自分の目でチェックしていた」と打ち明ける。「エンジニアは特に需給のバランスが難しく、それくらいやらないと企業はいい人材になかなか巡り合えない」(近藤さん)。
ただ、SNSを人力で巡回してExcelなどで管理すれば膨大な手間がかかる上、対象者がどれくらい今の仕事に不満を持っているか人事が感覚的に判断するのにも限界があったという。「この機能を活用してスカウトのメッセージを送り、既に面談に至ったケースもある」(近藤さん)。エンジニアの転職潜在層に狙いを絞ることで、現在はグループ全体で正社員や派遣などを合わせて約120人の人員を19年3月までに150人に増やす予定だ。
scoutyによると、どのくらい転職意欲が確実に高まったといえる段階でアラートを鳴らすべきかなどシステムはまだ調整中という。「転職活動はビジネスパーソンにとって大変な作業。『そろそろ仕事を変えてもいいかな』と思ったタイミングにスカウトのメールがくれば誰でも楽に転職ができる」(同社CEOの島田さん)。「勝手に“天職”を見つけ出すAI」の進化は、転職・採用という決して軽くない負担から求職者と企業を解放できるか。
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