働き方改革の中で、私たちは何に向き合うべきか 経営学者・宇田川元一さん:組織論、経営戦略論の研究家に聞く(2/5 ページ)
皆が快適に働ける環境を実現するために、企業はどのような組織づくりを目指していけばよいのだろうか? 組織論、経営戦略論を研究する経営学者の宇田川元一さんに聞いた。
大きな物語が崩れ、主体性を求められている私たち
宇田川: 既存の価値観が相対化されたことで、多くの人々がさまざまな物事に不信感を募らせています。一方で、そんな不信の時代にこそ求められているのが「民主化」なのです。
WORK MILL: 民主化、というのは?
宇田川: 簡単に言うと「一人一人が自分の行動や判断に、より責任を持たなければならなくなってきた」ということですね。当事者として参加を求められる必要が出てきました。
WORK MILL: 情報が得やすくなったことで選択肢が増えた。そして、選択肢が増えたことで、自分の選択に対する責任も増していると。
宇田川: ちょっと思想的な話をすると、哲学者ジャン=フランソワ・リオタールは、1970年代後半以降を「ポストモダン」の時代だと表現しました。彼によれば、物事の真偽や良し悪しの基準となっていた「大きな物語」(モダン)が終焉を迎え、それに対して不信感が高まると同時に、さまざまな物語が可能な状態である相対化の時代がポストモダンの特徴だと。
WORK MILL: まさに、今のような時勢を言い表していますね。
宇田川: 良くも悪くも「これさえ信じていれば大丈夫、うまくいく」という物語が崩壊してしまった今、人々は代わりにすがれるものを探しているんですよね。しかし、一方で皆、当事者として責任を持つことは、怖いんです。
WORK MILL: 怖いから、また何かにすがりたくなる。
宇田川: けれども、あらゆる物事が相対化される世界には、過去のように絶対的に信じられる物語は、もういくら探したって見つからない。無理に何かにすがろうとして、ウソみたいな物語を信じてしまったりもするけれど、それがウソっぽいこともどこかで知っている。そんな風にもがいている人たちのイライラやモヤモヤが、社会全体に漂っている……今の日本はそういう状況じゃないかなと、私は見ています。
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