“ワクワク”働けない日本の働き方改革に欠落している「QoW」とは?:ここが変だよ、日本の「働き方改革」(4/4 ページ)
モノもサービスも、実際に欲しい、買いたいと思ってもらえるようにするためには提供する側の高いモチベーションが欠かせないということだ。では、そのモチベーションはどこから来るのかというと……。
Quality of Workの向上こそが重要
ここまで書けば多くの人に理解していただけると思うが、働き方改革を議論する際に重要なのは“Quality of Work(QoW:働き方の質)”なのだ。
働き方の議論では、どれだけの残業を認めるか、パートタイム・派遣・正社員の区別をどうするか、定年を何歳までにするかといった“外形的な”話ばかりに議論が集中している。しかし、外形的な条件をどれだけ議論しても実際の仕事の内容に満足していなければ何の意味もない。
プライベートについては、Quality of Life(生活の質)という言葉が使われるようになり、物質的な豊かさ以外にも注目する必要性が認識されるようになってきた。そのことは働き方についても当てはまるはずだ。
今の職場が働き手にとって毎日出勤したくなる“ワクワクする”オフィス環境になっているか。仕事内容や成果が働き手にとって“満足できる”あるいは“充実している”内容になっているか。職場の人たちと毎日会えて一緒に働けることが“楽しい”と思えるか。
そういうことにもっと焦点を当てて、「Quality of Work」を再検証することこそが、今の日本の働き方改革に必要ではないだろうか。(了)
著者プロフィール
伊藤慎介(いとう しんすけ)
株式会社rimOnO 代表取締役社長
1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に工業デザイナーと共に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnOを設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の推進などモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所 アドバイザー、あずさ監査法人 総合研究所 顧問、ミズショー株式会社 社外取締役、亜細亜大学 都市創造学部都市創造学科 講師などを兼務。
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