なぜLGBT後進国ではダメなのか 「国つぶれる」発言を覆す“伝説のスピーチ”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
「同性婚が認められないのは違憲」として、10組の同性カップルが集団訴訟を起こす。先日、平沢勝栄議員が「国がつぶれる」と発言したことからも分かるように、日本は「LGBT後進国」。“自分と違う人”を尊重できる社会になるのか。そのヒントとなる「伝説のスピーチ」とは……
「なぜ反対する人がいるのか分かりません」
スピーカーは、ニュージーランド国民党で14年まで議員を務めたモーリス・ウィリアムソン氏。13年4月にニュージーランドの首都ウェリントンの議会での「婚姻平等法案」の最終審議と採決の際に行ったものです。
この法案が採決されても、太陽は明日も昇ります。あなたの住宅ローンは増えたりしません。皮膚病にかかったり、布団の中にヒキガエルが現れたりもしません。だから、この法案で大騒ぎするのは止めましょう。この法案が通ることは、影響がある人にとっては素晴らしいものです。でも、そうでない人にとって人生は何も変わりません。
今、私たちがやろうとしていることは「愛し合う2人に結婚を認めよう」としているだけです。ただそれだけです。外国に核戦争を仕掛けているわけではありません。農業を壊滅させるウイルスをばらまこうとしているわけでもありません。
私たちの「愛し合うカップルを結婚させてあげる」という法案の何が間違っているのか分かりません。もちろん自分とは違う人を好きになれないのは分かります。それは構いません。でも、なぜ反対する人がいるのか分かりません。
ウィリアムソン氏のスピーチは、反対票を投じた政治家や、左派的なコメンテーターからも称賛され、世界中で話題になりました。
来年、2020年には、東京オリンピックが開幕します。18年の平昌オリンピックでは、フリースタイルスキー男子スロープスタイルに出場した、米国のガス・ケンワージー選手が交際相手の男性とキスする様子がテレビ中継で放映され、「ホモフォビア(同性愛者嫌悪)をなくす、バリアを壊すなど、偏見を変えるたった1つの方法は、実際に見てもらうことだと思う。これは僕が子どもの頃には間違いなくなかったこと」と、子どもの頃に自身が苦しんだ経験を打ち明け、その喜びを表現しました。
関連記事
- 「生産性」に潜む“排除”の論理 新潮45事件の薄気味悪さ
『新潮45』に掲載された杉田水脈衆議院議員のLGBTに関する寄稿から始まった炎上事件は、同誌の休刊が発表される事態に。杉田氏の主張にある「生産性」は、社会に潜んでいる“ある価値観”を表面化させた。それは…… - “やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 - 「1カ月の夏休み」は夢? 日本人の“有給の取り方”がズレている、歴史的背景
月曜を午前半休にする「シャイニングマンデー」。経産省内で検討していると報じられたが、そんな取り組みは「無駄」。日本人は、世界では当たり前の「有給休暇をまとめて取る」こともできていないからだ。なぜできないのか。歴史をさかのぼると……。 - 子どもを持つのは国のため? 「3人以上産んで」発言に潜む“幻想”
加藤寛治衆議院議員の「3人以上子どもを産んで」発言。「何が問題なのか」という声も聞こえますが、こうした発言が繰り返される理由を理解しておく必要があります。そこには、戦時中から変わらない「価値観」がはびこっていて……。 - 減り続ける「管理職のイス」と“死亡率”急上昇のリアル
「管理職になりたくない」人が6割を占める調査結果が問題になっているが、管理職の椅子が減っている現状を考えれば、希望者は4割で十分。それよりも、管理職の在り方そのものを見つめ直す必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.