「省庁や大企業の生産性は低い」は本当か?:幸せと生産性を考える(4/4 ページ)
この連載の最終回では、大企業や省庁で働くビジネスパーソンが、幸福度や生産性についてどう考えているかについて見ていきます。
「良くする」ために動くのは誰もができること
このコラムを始めたときに、生産性と幸福度それぞれについての自分の思いを話されるコメントや感想を多くいただきました。このことから、働き方改革が声高に叫ばれた昨今は特に、この2つが気になるワードであることの確信を持ちました。
会社の中にいると、自分の幸せや仕事で感じる幸福感について話す機会もなく、おざなりになりがちなのかもしれません。
今回の対談の中で、大企業のAさんが「ホワイトカラーの『ブルーカラー化』」という表現をされた場面があり、その言葉がとても印象に残りました。製造現場が工夫してどんどん生産性を高めているのに対して、いろいろな工夫して物事を効率的にするのが仕事である頭脳労働者(ホワイトカラー)がルールや規制に縛られており、長時間残業で肉体労働化していることを端的に表している言葉だと思いました。
私たちの多くは、世の中に対して何か良いことをしたいと思っているはずです。規制やルールがその気持ちを妨げるのはまさに本末転倒ですね。
そうした本末転倒なルールの運用になっていないかどうか、自分自身が仕事でどういうときに嬉しいと思うかどうか、チームでこうなったら嬉しいよねといった話が周りのメンバーと話せるかどうかなど、そういう点から現状の仕事を振り返り、自らの環境をより良くするために動くのは、誰もがしてもいいし、誰もができることです。
実際に、あるセミナーでサイボウズの質問責任の話を聞いた人が、「この会議のこの紙は次回からなくしてみてもよいですか?」と勇気を持って会社で言ったところ、「いいよ」とあっさり上司に承認され、会議がペーパーレスになったというエピソードがあります。その人曰く「あまりにもスムーズにOKが出てびっくりした。今まで誰も言わなかっただけだと気が付きました」とのことでした。
この話を聞いて、慣習を変えるのは誰でもできることなんだなと改めて私も思いました。組織は大きくても、そこで諦めずに意思を持って自分のできる範囲から取り組めば、もやもやすることをスッキリに変えられるのです。
このコラムが読者の皆さんの仕事にとって、何かのきっかけや頭の整理に少しでも役に立つと嬉しいです。次はみなさんの職場でお会いしたいですね!
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