「省庁や大企業の生産性は低い」は本当か?:幸せと生産性を考える(3/4 ページ)
この連載の最終回では、大企業や省庁で働くビジネスパーソンが、幸福度や生産性についてどう考えているかについて見ていきます。
大企業は硬直化しやすい?
実は、大企業や省庁のイメージとして、下記のように表現したところ納得してくれる人が多かったという経験が私にはあります。
今回の2人の話から、それは固定観念であったことが分かりつつ、一方でこの図の位置に納得される方も多かった話をすると、Aさんが下記のように教えてくれました。
「大企業の場合は、いわゆる美辞麗句のミッション・ビジョンになっていたら、自分の仕事の価値が分かりにくくなりやすい。また、株主やステークホルダーが多い分、常に売り上げや成績が問われるので、計画とのかい離があってはならないと保守的になりがちです。何か違うなと思うことがあっても、かい離をつくらないほうを優先すると、仕事が面白くなくなります。大企業の場合は、ミッションやビジョンをチームや自分個人のサイズにくだいて落とし込む、面倒くさいプロセスが大事かなと思います」
以前紹介した前野先生の幸福度の話において、幸福度が高まると創造性も上がるという話があり、そこの議論にもなりました。
「創造性は、アイデアや思いが形になっていく過程が面白いのであって、まさに『やってみよう』と思わせる環境があることが大前提です。そして、そのやってみたことへの素早い判断。この2つがないと創造性も生まれなければ、幸福度も高くならないように感じました」(Bさん)
「創造性っていうと、技術革新みたいな大それたことを思いがちだけど、『従来やってたけどやらなくてもいいんじゃない?』ということでも充分だと思っています。例えば、『年末年始の挨拶訪問って何のために?』といった疑問で良い。そして上司もそれに共感すればなくなることもあると思うのです。このような少しの見直しでより効率的になることの積み重ねが増えていくと、生産性と幸福度は上がっていくのかもしれません」(Aさん)
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