「省庁や大企業の生産性は低い」は本当か?:幸せと生産性を考える(2/4 ページ)
この連載の最終回では、大企業や省庁で働くビジネスパーソンが、幸福度や生産性についてどう考えているかについて見ていきます。
思いを共有して放牧する上司
Bさんが言うには、「上司が素晴らしかった」ということでした。
担当するプロジェクトに対する自分の思いを共有して、詳細はメンバーに任せる(Bさん曰く「放牧」)。自分の持っている情報はすべてメンバーと共有し、メンバーの成果が出たら皆で称賛し合う。このことを徹底されていたようです。自らが方向づけをするよりは、チーム内のくすぶっている思いや意見が出やすいようにしていたとか。
そうしたマネジメントに対して周りのマネジャーは、「異色」だと反応しました。でも、本人は全く気にしていなかった。部署が幸福になって、仕事がうまく回っていけば文句を言う人はいない――そのことをBさんは横で見ていて思ったそうです。
「省庁は紙ベースの仕事をしていて、生産性が低いイメージがあるのですが、そうではないのでしょうか?」と、ぶしつけな質問を投げてみたところ、「長時間労働が多い点など、時間あたりの生産性は低いかもしれません。しかし幸福度はマイナスではない。また、所属していた課内はペーパーレスで、チャットを使うなど、さまざまな形でコミュニケーションを図れる部署でしたので、必ずしも紙ベースというわけではないです」とのことでした。
Bさんは続けます。
「赤い丸の部分も、時間あたりの生産性という意味では、もっと左側だと思います。しかし『自分たちのやっている仕事は価値あるものだ』といった仕事の価値を認識して、行動や発信をして現場が好転していくのを多く経験したので、その意味での生産性です」
「2割報告」で挑戦のハードルが下がった
大企業のAさんが丸をつけた部分はココでした。
その理由を話してもらうと、「生産性についてはトライアンドエラーの面があるので、思ったような効果につながるまで時間がかかっているという意味でココかなと」。
しかし今の社長に代わってから「2割報告」という言葉が使われ始め、進ちょくが2割の段階で立ち話でも良いから報告してもらえばよいとなってから、上長へのレポーティングがラクになったとのことでした。
「自由度があるほうが、やりがいや工夫のしがいがあります。10年前までは『俺が決めるのだ』という昭和型のマネジメントも見られたけど、今はなくなってきました。それは市場が飽和状態にあるから未充足ニーズをつかもうとすると、失敗の許容度と動きの自由度が必要になってくるからです。5年前くらいまでは、実現可能性が高いものや予定調和的なものしか企画が通りませんでした。しかし2割報告となってからは、致命傷を受ける前に確認でき、挑戦へのハードルが以前に比べて低くなりました」
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