ゴーン妻の“人質司法”批判を「ざまあみろ」と笑っていられない理由:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の逮捕・勾留に関して、キャロル夫人がいわゆる「人質司法」を批判した書簡を人権団体に送った。刑事司法制度において「自白偏重主義」を貫いてきた日本は、海外からどんな国であると認識されているのか。
密室の取り調べが「勾留地獄」「怖い国」のイメージにつながる
司法制度改革については、日本弁護士連合会(日弁連)も声を上げている。その中でも重要視していることの一つは、自白偏重主義からの脱却につながる「取調室の可視化」だ。日弁連はこう指摘する。
日本の刑事司法制度においては、捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断されたいわゆる「密室」において行われています。このため、捜査官が供述者を威圧したり、利益誘導したりといった違法・不当な取調べが行われることがあります。その結果、供述者が意に反する供述を強いられたり、供述と食い違う調書が作成されたり、その精神や健康を害されるといったことが少なくありません。
そのうえ、公判において、供述者が「脅されて調書に署名させられた」「言ってもいないことを調書に書かれた」と主張しても、取調べ状況を客観的に証明する手段に乏しいため、弁護人・検察官双方の主張が不毛な水掛け論に終始することが多く、裁判の長期化やえん罪の深刻な原因となっています。(日弁連Webサイトより)
容疑者や被告を公正に裁くのであれば、その過程を明らかにする必要がある。ちまたでも、少し前ならみんな軽視していた「コンプライアンス」「透明性」が今は常識になっている。企業などの狭いコミュニティーで行われる「パワハラ」「セクハラ」などもどんどん表沙汰になり、社会問題として噴出している。そんな時代に、日本の刑事司法制度では、人生に大きな影響を与える犯罪捜査の取り調べがいまだに密室で行われ、起訴か不起訴かは検察がさじ加減で決めている。それでは通用しないのではないか。
もっとも、こうした刑事司法制度のイメージは、結果的にはもっと広い意味で「日本は人権が保障されておらず、強権的で配慮のない怖い国」という認識につながっていく。以前、あるフランス人記者が「外国人が心底怖がる『勾留地獄・日本』」という記事を書いていたが、日本はそんな風に見られることになる。キャロル夫人が書簡をしたため、声を上げなければいけないと感じた背景には、こんなイメージもあったのかもしれない。
ネットでは今回のキャロル夫人の書簡に対して、辛辣(しんらつ)なコメントも多い。「共犯者」「口裏合わせや証拠隠滅が出来ないことへの焦りといら立ち」「汚い金でぜいたくしていた人間たちが何を言うか」「夫のためというより、金のために騒ぎたてている感が強い」「(ゴーンが)7キロ減ったのは肥満だったから」といったものや、日本が安全なのは司法制度がシビアだからかもしれない、というコメントも見かけた。
あまりにも感情的で、一方的ではないだろうか。ただ今こそ、少し冷静になって、夫人の話に少し耳を傾けてもいいのではないか。
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