元日銀マンが斬る 厚労省の統計不正、真の“闇”:地に落ちた政府統計(4/6 ページ)
厚生労働省の「毎月勤労統計」が炎上している。これに関する不正をかばうものはいないだろう。誰の目に見ても明らかな不正である。しかしこの問題には深い「闇」があるのではないかという。
政府統計は戦後復興のため
第二次大戦後、吉田茂に召し出された大内兵衛の尽力により、統計法が制定された。吉田茂は駐英大使の経験があり、英国流の統計(エビデンス)に基づいた意思決定や原理原則に沿った意思決定を重んじていた。故に、戦後復興のためには、政府統計の充実が肝要であるとして、実務担当者に大内兵衛を召し出したのである。
大内兵衛の言とされる、「統計の整備は、日本再建の基礎事業中の基礎事業である」との言葉が、当時の問題意識を物語っている。
その統計法も、経済・社会環境の変化で、時代遅れになった。経済が製造業からサービス業へとシフトし、生産の流れが把握しにくくなった。バブル崩壊後の不況から、企業のコスト意識が高まり、報告者負担が経団連などでも議論になった。調査して集めたデータを、ただ統計を作るためだけではなく、学術・研究目的で二次利用できるよう求める要望も強まった。
日本の統計システムは、その都度、行政の問題意識に沿って迅速に調査を行えるよう、各省庁が統計を作成する分散型の統計システムを採用している。中央省庁の縦割りの中で、農水部門への統計職員の偏在が解消できなかったため、統計法改正を機に、人員配置を見直し、経済のソフト化に対応して、サービス部門の統計を強化するという議論があった。
公明正大で信頼され、経済・社会の状態をタイムリーに的確に把握できる統計を作成する。そして、使い勝手が良いよう、公表データだけではなく、二次利用にも取り組む。
統計法改正の趣旨をかみ砕いて言えば、そうした理想を掲げ、政府統計の立て直しを図ることだった。改正された統計法は、07年5月23日に公布され、09年4月1日に施行されている。既に10年近くが経つ。
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