公共交通が示す「ドアtoドア」の未来 鉄道はMaaSの軸になれるのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
先進交通の分野で「MaaS」という言葉が話題になっている。自動車業界で語られることが多いが、鉄道とも深い関係がある。「利用者主体の移動サービス」の実現のために、鉄道こそ重要な基軸になるからだ。「ドアtoドア」のサービスを提供するために、鉄道はどうあるべきか。
MaaSを意訳すると「利用者主体の移動サービス」
MaaSは「Mobility as a Service」の略だ。言葉の説明として「サービスとしての移動」が使われている。これではさっぱりさっぱり分からない。今ある交通手段だって全て「サービスとして移動を提供している」からだ。MaaSの仕組みは、やはりJR東日本流が分かりやすい。「マイカーを使わないでドアからドアへ移動を提供しますよ。あらゆる交通機関が連携してね」である。
そしてJR東日本は自らの鉄道サービスにおいて「臨機応変な列車運行」と定義した。この発想が重要だ。今までは、鉄道会社が旅客動向を想定し、最も客数が多い時間帯に列車ダイヤを設定した。客は列車の時間に合わせて駅に向かった。しかしMaaSにおいては、客が移動したい時に駅に行くと、列車がタイミング良くやってくる。
もちろん、1人の客のために大きな電車1台を動かすなんて非効率だから、そこまでのオンデマンドサービスにはならないだろう。しかし、複数の客がMaaSアプリで移動経路を指定し、ビッグデータとして把握できれば、最も希望の多い時間帯で臨時列車を運行できる。電車の終点で、さらに先に向かう電車に乗り継ぐという客が大多数だと分かれば、いっそ直通して乗り換えを解消しようという意思決定もできる。現状では車両のやりくりなど難しそうだけど、目指すべき方向としてはそうなる。
つまり、今までの移動サービスは全て、サービス提供者がダイヤ、運行拠点を用意して、利用者が移動サービスに合わせる必要があった。MaaSでは、利用者が移動したいと思ったときに、最適な移動サービスが提供される。利用者主体である。発想が逆転している。
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