両国駅“幻”のホームで「燗酒とおでん」 “あまり飲まない”層を狙う業界の危機感:前売り券は完売(1/2 ページ)
JR両国駅の“幻”の3番線ホームで、燗酒とおでんを楽しむイベントが開かれた。寒い季節にぴったりの内容だが、清酒業界が抱える課題に立ち向かうための狙いがあった。
JR両国駅(東京都墨田区)に“幻”のホームがある。現在は使われていない3番線ホームだ。普段はひっそりとしているこの場所がにぎわいを見せている。ここを会場にしたイベント「燗酒(かんざけ)ステーション『ご当地おでんで燗酒〜両国駅で飲みましょう』」が1月17日から開催されているからだ(20日まで)。
イベントは燗酒をおでんとともに楽しむという内容で、「全国燗酒コンテスト実行委員会」が初めて開催。1回50分の入れ替え制で各回の定員は100人(全15回)だが、2000円の前売り券は完売したという。
なぜ温めて楽しむ「燗酒」に限ったイベントなのか。そして、なぜ「おでん」なのか。ただ「寒いから」というだけではない、清酒業界の狙いがあった。
燗酒とだしの相性「試してもらいたい」
両国駅の3番線ホームは、現在使われている1、2番線ホームよりも少し低い位置にある。1、2番線ホームから両国国技館方面を見下ろすと、全体がよく見える。イベント当日は、ちょうちんで華やかに彩られていた。古めかしい駅名板も残っている。
会場に入ると、10枚つづりの試飲券とおちょこ、おでんを入れる容器を手渡された。全国の酒蔵10社がブースを構えているほか、おでんを手渡すコーナー、さらに、こたつが設置されているコーナーもあった。
おでんは、紀文食品が商品を提供していた。「だし自慢おでん」「名古屋風味噌煮込みおでん」「赤からおでん」「静岡風おでん」「鹿児島風おでん」の調理済みおでん5商品から1つを選ぶ。記者はみそ煮込みおでんを選び、温かいおでんを容器に移した。
次にお酒をもらう。最初は福光屋(石川県)の「福正宗」の熱燗を注いでもらった。熱すぎず、さらっと飲める。おでんとの相性も良い。
「日本酒は温めておいしく感じる成分が含まれている。世界的に見ても大きな特長です」と話すのは、全国燗酒コンテスト実行委員会の代表者である、酒文化研究所の山田聡昭さん。日本酒を温めるとうまみがふくらむ特性があり、だしを使った料理の味が引き立つのだという。「燗酒を試して、おいしさを知ってもらいたい」と思い、イベントを企画した。
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