クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」に見る良きリーダーシップとフォロワーシップ:大ヒット映画から学ぶ(2/3 ページ)
大ヒットとなった映画「ボヘミアン・ラプソディ」。今回はこの映画に描かれた人間模様を題材に、リーダーシップとフォロワーシップについて考えてみます。
パワーの源泉からリーダーシップを考える
さて、現代のリーダーシップ論では、リーダーとは役職者だけが担う役割ではなく、誰もが学ぶことができ、状況に応じて実践すべき機能であるということが常識です。また、リーダーシップと対比されるフォロワーシップも、皆が必要に応じて発揮することが望ましいとされています。
つまり、状況に応じて、誰かがリーダーシップを発揮し、その他のメンバーがフォロワーシップを発揮するという状態が臨機応変に展開していくと、チームは良いパフォーマンスを出しやすくなるのです。
まずリーダーシップから考えてみましょう。
リーダーシップは学べるとはいえ、何のバックグラウンドもない人間がいきなりチームでリーダーシップを発揮することは難しいものです。やはり何かしらパワーの裏付けが必要となります。パワーにはいくつかの分け方がありますが、ここでは最も典型的な「公式の力」「個人の力」「関係性の力」の枠組みで分類してみましょう。
まず公式の力ですが、音楽バンドゆえ、通常の組織のような上下関係はありません。公式にはリーダーが誰ということも明示されていません。もともと水平的な関係だったと言えます。メイとテイラーは、前身バンドからの生え抜きですが、それゆえに強い立場にあるというわけでもありませんでした。
関係性の力に関しては、もちろん個々人の人脈などもあったのでしょうが、それは本映画ではあまり見えてこなかったのでここではかなり簡略化しました。映画の中では、マーキュリーが「ボヘミアン・ラプソディ」を知人のラジオパーソナリティに掛け合って流してもらうシーンもありますが、彼は他のメンバーとも仲が良かったようです。
やはり注目されるのは個人の力です。通常はこの部分に差がありすぎることが(特にボーカル兼ソングライターと、他のメンバーの差)、往々にしてバンドがうまくいかなくなる、最悪のケースでは崩壊に至るきっかけになります。日本ではオフコースの小田和正や、米米CLUBの石井竜也、LUNA SEAの河村隆一などが分かりやすい例でしょうか。また、スーパースターが2人いる場合も、「両雄並び立たず」になることが少なくありません。ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーはその典型です。
一方、クイーンの場合、確かにマーキュリーが頭一つ抜けた感はありますが(事実、映画の中でもそれゆえにソロ活動をし、バンドが危機に瀕するシーンが描かれます)、他のメンバーも非常に高い能力を持っており(全員がチャートインするシングル曲を書いています)、またそれぞれに得意技があったことで、お互いが補完し合い、場面に応じて各自がリーダーシップ、そしてフォロワーシップを発揮する非常に良い関係が構築されていました。
誰かが作ったイマイチの曲には、他のメンバーがイマイチとはっきりと言うシーンも印象的です。一瞬けんかになりかけるのですが、その手前で何とか落ち着きます。この良い意味での緊張感が、クイーンの音楽性の高さにつながっていきました。
映画の中の具体的なシーンで、各メンバーがリーダーシップ、そしてフォロワーシップを発揮した典型的シーンを2つ挙げましょう。
シーン1
メンバーが口論する中で、ディーコンが「これが曲だ」と言ってマーキュリーに譜面を渡します。そして「Another One Bites the Dust」(クイーンの最大のヒット曲の1つで、そのベースのリフは音楽史上でもトップ10に入るでしょう)のベースラインを弾き始めます。メイが「それいいね!」と言うと、それまでけんかをしていたメンバーが一気にまとまり、曲を作り上げていきます。ディーコンは最後にオーディションで参加したメンバーで、年齢も最年少です。そのディーコンがこのシーンではリーダーシップをとり、メイや他のメンバーが良きフォロワーシップを発揮していったのです。
シーン2
マーキュリーが遅刻した場面で、メイが「We Will Rock You」のアイデアを出し、他の2人のメンバーも一緒に実験を始めます。遅れてきたマーキュリーは、「なんだこれ?」と最初反応しつつも、曲作りに加わり、クイーンを代表する名曲が出来上がっていきます。これもフォロワーシップが印象的なシーンでした。
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