キャッシュレスが進む日本、社会は二極化する:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
2019年は「キャッシュレス元年」という位置付けになるかもしれない。もし日本でもキャッシュレス化が進行した場合、これまで単一のマーケットだった個人向け金融サービスが二極化することが考えられるだろう。
2018年はメガバンクがATMや店舗の削減に乗り出したり、電子マネーのPayPayが100億円キャンペーンを実施したりするなど、キャッシュレス化に向けた動きが顕著になった1年だった。19年は長い目で見た場合、「キャッシュレス元年」という位置付けになる可能性が高い。
もし日本でもキャッシュレス化が進行した場合、これまで単一のマーケットだった個人向け金融サービスが二極化することが考えられる。具体的に言えば、クレジットカードを持てる層と持てない層とで、金融サービスが区分されることになる。
これまではすべてが銀行中心だった
これまで日本の金融サービスの中核として位置付けられてきたのは、言うまでもなく銀行である。各種の法制度も銀行中心のシステムを後押ししてきたといってよい。
例えば会社員の場合、給与は銀行から振り込まれるケースが多いが、給与の支払い方法は法律で規制されている。労働基準法では給与は通貨で支払うことが義務付けられており、企業が給与を支払うためには、直接、現金を手渡しするか、銀行に振り込むしか方法がなかった。つい最近まで、給料袋で直接、現金を手渡す企業もあったが、そうした慣習が存在していたのも法律があればこそである。
しかし、社会のキャッシュレス化が進むとこうした図式が変化する。すでに若年層の中には、銀行口座ではなく、電子マネーの口座が事実上の銀行口座になっている人が増えている。給料が振り込まれると、早速、電子マネーにチャージしてしまい、買い物の多くをその中で完結させてしまうからだ。
こうした状況を受けて政府も法改正を進める方針を示しており、労働基準法を改正し、企業が直接、電子マネーで給料を支払うことを可能にするという。もし法改正が実施されれば、電子マネーの銀行化がさらに進むことになるだろう。
そうなった場合、金融サービス市場にはどのような影響が及ぶのだろうか。
現時点においてキャッシュレス決済の中心となっているのはクレジットカード(クレカ)である。だがクレカはあくまで銀行口座を起点とした決済インフラであり、貯蓄的な機能は備えていない。利用者が銀行口座を持っていることが大前提のサービスである。
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