「ムダな会議」による企業の損失は年間15億円:こんなにも……!(3/3 ページ)
長時間労働や労働生産性について議論する際、しばしば指摘されるのが、「会議、打ち合わせの多さ」だ。果たして、日本企業はどのくらいの時間を会議に費やしているのだろうか……?
ムダ会議を防ぐための2つのポイント
1.「開かない」「呼ばない」をまず考える
推計された時間数を見ると、やはり、端的に会議の開かれる数が多すぎるようです。それは参加者自身が最も感じています。会議時間に多くの人件費を費やされていることを会社全体で意識し、必要とされる人と議題を絞り込むことが、第一の原則になります。
また、育児や介護などで制限された時間しか働くことのできない人、テレワークや在宅勤務のマネジメントにおいても、このことは重要さを増します。「会議を開く」ことに依存した意思決定は、設定できる会議時間帯が少ないこれらの人を意思決定から排除してしまうことにつながります。実務上、時短社員の「会議設定時間が限られる」ことに悩むマネジャーは多いですが、修正すべきは、そもそもの会議の数が多すぎることのほうかもしれません。
2.「どう終わるか」に注力するために「司会」を立てる
上述したように、会議は「終わらせ方」が決定的に重要です。「うまくいく会議のTips」などでしばしば指摘される、事前準備や目的の明確化などの「始まり方」はほとんどムダに影響していません。データから見る限り、何よりも「終わらせ方」こそが会議のツボのようです。
事前準備をして資料を共有するのにも、時間はかかります。それよりも終わり方、をコントロールする「司会」「ファシリテーター」の役割を1回1回の会議においてきちんと明確化すべきです。日本企業は、会議のファシリテーターのスキルを特別に学ぶ機会が少なく、そもそも司会者を明確化している率も2割を切っています。
歴史的に、職場メンバーの同質性が高く、同じ時間・空間を共有することで組織内の「仲間意識」を醸成してきた日本企業においては、「集まること」「みんなで話すこと」に意義が置かれがちです。その意味で、「ただ皆が集まって、役割も明確でないまま、最後に何も決まらない会議」、というのは旧態依然としたシンボリックな日本企業の風景と言えます。
しかし、より柔軟で自由な働き方が望まれている今、この繰り返される「ムダな会議」を無くすことは、プライオリティを上げて取り組まれるべき課題のように思います。
調査概要
パーソル総合研究所/中原淳(2017-8)「時間労働に関する実態調査(第1回・第2回共通)」
調査方法: 調査会社モニターを用いたインターネット調査
調査協力者: 全国20〜59歳の正社員 ※企業規模10人未満は除外
調査対象人数: 6000人(上司層1000人、メンバー層5000人) 合計1万2000人
調査期間: 第1回調査:2017年9月/第2回調査:2018年3月
※第1回と第2回は別サンプルでの調査実施
調査実施主体: パーソル総合研究所/中原淳
※引用・転載にあたっては、事前にご連絡をいただく必要はありませんが、必ず以下の【出典記載例】に則って、出典をご明記ください。
- 出典記載例)出典:パーソル総合研究所/中原淳(2017-8)「時間労働に関する実態調査(第1回・第2回共通)」
著者プロフィール
小林祐児(こばやし ゆうじ)
パーソル総合研究所 主任研究員
世論調査機関に勤務後、総合マーケティングリサーチファームにて、各種の定量調査・定性調査・訪問調査・オンラインコミュニティ調査など、多岐にわたる調査PJTの企画-実査を経験した後、2015年入社。専門は理論社会学・社会調査論。現在の主な研究領域は長時間労働是正問題・ミドル・シニア層の社内躍進・アルバイト・パート領域のマネジメント・新卒〜若年者のキャリアなど。
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