ファーウェイの“強気”はいつまで続くか 米国が繰り出す「次の一手」:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
中国・ファーウェイCFOの逮捕、起訴が注目される中、同社製品を巡る米中の攻防はさらに激しくなっている。排除の動きが広がる一方、ファーウェイ側は強気の姿勢を崩さない。熾烈なせめぎ合いは今後、どうなっていくのか。
ファーウェイの運命はどうなる?
しかもこんな話もある。米ニューヨーク・タイムズ紙(1月26日付)は、「サイバーセキュリティの専門家らが綿密に同社の製品に『バックドア(裏口=コンピュータを使い遠隔操作でデジタル製品などに侵入する入り口のこと)』がないかソースコードをチェックし、ファーウェイが深センの本部から遠隔操作でアクセスでき、いくつかのネットワークをコントロールできる可能性があると判断した。これにより、米国と英国の高官らはファーウェイの能力について懸念を募らせている」と報じている。
要するに、少なくとも中国政府から「バックドア」を組み込むよう命じられたら実施できるということだ。英ガーディアン紙は、「中国政府が機器にアクセスすることを許し、スパイ行為や破壊工作ができてしまう」と指摘している。
さらに5Gでつながっていく世界中のネットワークで、中国の情報機関が、軍部や政府、民間企業のコミュニケーションを盗み取ることもできるだろう。
こうした懸念が渦巻くなかで、今後のファーウェイの運命はどうなるのか。日本では、こうした騒動にもかかわらず、今もファーウェイ製品は普通に手に入る。ただ政府主導で排除の方向に向かっているのは事実であり、今後ファーウェイ製品がどう扱われていくのかは注目である。
これから5Gの導入が進むにつれ、ファーウェイをはじめとする中国勢と、米政府との衝突は続く。しかもそのせめぎ合いは、今以上に熾烈(しれつ)になっていく可能性が高いのだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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