女性の“成長意欲が低い”は本当か?:管理職になりたがらないワケ(1/5 ページ)
女性の活躍に関してはさまざまな調査や研究が行われているが、「活躍」を阻害する要因の1つとして女性側の意欲の低さが指摘される。確かに、女性の「昇進意欲」の低さはさまざまなデータが示しているものの、それが女性の仕事への意欲全般が低いと言えるのだろうか?
近年、「女性の活躍」が声高に叫ばれ、多くの企業が女性管理職を増やすことに奔走しています。管理職を増やすことだけが「女性活躍推進」ではないものの、目先の数値目標達成のために性急なポジティブ・アクションを進めようとしてさまざまなあつれきが生じ、「活躍」の本来のあり方や、それを阻む真因が見えづらくなっているように思われます。
女性の活躍に関してはさまざまな調査や研究が行われていますが、「活躍」を阻害する要因の1つとして女性側の意欲の低さが指摘されています。
厚生労働省「平成26年度雇用均等基本調査」によると、従業員30人以上の企業において、女性の活躍を推進する上で必要な取り組みとして「女性のモチベーションや職業意識を高めるための研修機会の付与(38.1%)」が上位に挙がっています。裏を返せば、「女性のモチベーションや職業意識が低いこと」を企業として問題視していることが分かります。
確かに、女性の管理職意向が低いことはさまざまなデータで示されており、その意味で、「昇進意欲」は低いと言わざるを得ません。しかし、管理職意向が低いことは、そのまま女性の仕事への意欲全般が低いことを意味するのでしょうか。
本稿ではこの問いについて考えていきます。結論を先取りすると、女性は「管理職意向がない」からといって「成長意欲が低い」わけではなく、仕事への意欲全般が低いとは言えません。
仕事において前向きな「成長意欲」がある女性が管理職を目指すには、旧来の画一的な「管理職」のあり方を見直し、女性も管理職として働きやすい「環境」を整備することが必要であり、環境を整備する前に、「女性は意欲が低い」などと嘆くのは、本末転倒だと言えます。
昨今の働き方改革にも女性活躍推進の狙いが含まれており、副業・兼業やテレワークなど、時間や場所にとらわれない働き方が徐々に浸透してきています。しかし、まだ導入企業が少ないこともあり、こうした働き方が推進されることで本当に女性の「活躍」が進むのかについては、これまであまり検証されてきませんでした。
本稿では、パーソル総合研究所が2018年2月に実施した「働く1万人の就業・成長定点調査2018」の結果を用いて、副業・兼業やテレワークなどの時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の推進が女性の管理職意向を高めることを示し、女性にとっても魅力的な管理職のあり方について議論していきたいと思います。
※なお、本稿では、特に議論に上りやすい正社員に絞って議論します。
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