女性の“成長意欲が低い”は本当か?:管理職になりたがらないワケ(2/5 ページ)
女性の活躍に関してはさまざまな調査や研究が行われているが、「活躍」を阻害する要因の1つとして女性側の意欲の低さが指摘される。確かに、女性の「昇進意欲」の低さはさまざまなデータが示しているものの、それが女性の仕事への意欲全般が低いと言えるのだろうか?
管理職意向は低くても「成長意欲が低いわけではない」
まず、管理職になりたい人の割合について、あらためて見てみましょう。性年代別に管理職になりたい人の割合を見ると、図1に示すように、特に20代・30代で女性の管理職意向が低いことが分かります。
では、同様に、仕事を通じた成長をどれくらい重視しているかという「成長意欲」についても見てみましょう。管理職意向は年代とともに下がりますが、成長に関しては、年代にかかわらず7割以上の人が重視しています(図2)。また、いずれの年代においても女性は男性よりも成長を重視している人の割合が高く、特に、20代・30代でその傾向が顕著です。「女性は意欲が低い」は少なくとも「成長」意欲の観点からは誤解であると言えるでしょう。
女性は、成長意欲は高いのに、管理職意向は低い。このことを分かりやすく示すと、図3のような関係になります。
男女ともに、成長意欲のある人の方が成長意欲のない人よりも管理職になりたいと思う割合が高くなっています。しかし、成長意欲のある男性の46.1%が管理職になりたいと答え、その割合は管理職になりたくない人(33.6%)を上回るのに対して、成長意欲のある女性で管理職になりたい人はわずか20.0%にすぎず、64.4%が管理職になりたくないと思っています。
一方、男性においては、成長意欲がないにもかかわらず管理職になりたい人も約2割存在します。
なお、管理職への昇進可否が定まる40代以降は、管理職になれなかった結果として「意欲の冷却」が生じることが考えられるため、ここでは20代・30代に絞って分析しています。
このように成長意欲と管理職意向との関係性に男女差があることから、そもそも「成長」の捉え方が男女で違うのではないかという疑問が湧きます。そこで「成長としてイメージするもの」を確認したところ、上位3項目は男女ともに「仕事の効率・スピードが上がること」(男性71.9%,女性77.3%)、「新しい知識や経験を得ること」(男性71.7%,女性80.0%)、「給料・報酬が上がること」(男性69.2%,女性79.8%)となっており、主な項目の顔ぶれに男女差は見られませんでした(グラフは割愛)。
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