女性の“成長意欲が低い”は本当か?:管理職になりたがらないワケ(3/5 ページ)
女性の活躍に関してはさまざまな調査や研究が行われているが、「活躍」を阻害する要因の1つとして女性側の意欲の低さが指摘される。確かに、女性の「昇進意欲」の低さはさまざまなデータが示しているものの、それが女性の仕事への意欲全般が低いと言えるのだろうか?
成長意欲が高いのに管理職になりたくない。その理由は?
では、なぜ女性は成長意欲が高いのに管理職になりたがらないのでしょうか。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが15年に公表した「女性管理職の育成・登用に関する調査」によると、女性は「管理職は家庭(プライベート)との両立が困難」と考えて管理職になりたくないと考える割合が男性に比べて高く、「管理職の多忙なイメージ」が子育て等の家庭生活との両立を困難と認識させ、女性の昇進意欲を低下させていると指摘しています。
子育てが両立困難の主な要因なのであれば、子どもがいない女性は子どもがいる女性よりも管理職意向が高くなると考えられます。しかし、今回の調査データで家庭の状況(未既婚・子ども有無)別に管理職意向を見たところ、男女ともに「未婚・子なし」で管理職意向が低く、子どもがいる女性は子どもがいない女性よりも管理職意向が高い傾向が見られました(図4)。
日本においてはいまだなお、第1子出産を機に正社員として働く女性の約3割が辞めるなか(※1)、もともと管理職意向がある人が出産後も働き続けていることも考えられますし、既婚男性に関しては、家庭を持ち、一家の大黒柱として出世することをよしとする規範意識が根強く残っているのかもしれません。
いずれにせよ、未婚や子どものいない女性でも管理職意向が低いことから、「家庭(プライベート)との両立困難」で管理職になりたくない、という女性の思いは、子育てとの両立に限られるものではなさそうです。少なくとも、しばしば言われる「両立困難」という理由は、深掘りする必要がありそうです。
管理職になりたくない人たちにとって「子育て等の家庭との両立」は表面的な断り文句であり、実のところは長時間拘束されて過大な責任を負担する旧来型の管理職のあり方に疑問を呈しているのかもしれません。
※1 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015)。対象は子どもが1人以上いる初婚同士夫婦であり、第1子出産前後の正規職員(妻)における就業継続率は2010〜14年で69.1%。
関連記事
- ITエンジニアからの転身 小さな漁港に大きな変化を生んだ「漁業女子」
三重県尾鷲市の須賀利で漁業を始めた、東京の居酒屋経営会社がある。そのスタッフとして漁業事業を引っ張るのが田中優未さんだ。元々はITエンジニアだった田中さんはなぜ今この場所で漁業にかかわっているのだろうか……? - 弱みだった「人」をどう変えた? アルバイト出身の女性役員が語るスープストックトーキョー流の働き方
スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を展開するスープストックトーキョーでは従業員の働きがいと働きやすさを推進し、顧客へのサービス向上や従業員のキャリア支援にもつなげようとしている。その取り組み内容や成果について、同社取締役の江澤身和さんに話を聞いた。 - 「人事から世界変える」 ユニリーバの女性取締役が本気で目指す“一億総ワクワク社会”
完璧な人間はいない――。だが、仕事も私生活も充実させ、鮮やかにキャリアを築く「女性リーダー」は確実に増えてきた。企業社会の第一線で活躍する女性たちの素顔に迫り、「女性活躍」のリアルを探る。 - ファンケルの「アクティブシニア社員」は会社に何をもたらすのか?
労働人口が減少する日本において、いち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業が出てきている。化粧品と健康食品メーカーのファンケルでは65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という制度を打ち出した。そこで活躍する社員に実際の話を聞いた。 - 日本企業で「女性活躍」は進んでいる? 600社に聞いた結果は……
日本企業で「女性活躍」は進んでいるのか?――エン・ジャパン調べ。
Copyright © PERSOL RESEARCH AND CONSULTING Co., Ltd.All Rights Reserved.