衰退している熱海になぜ観光客が増えているのか:かつてのイメージは「セレブな街」(4/4 ページ)
いま熱海に観光客が戻り始めている。一時はピーク時の半数まで観光客数が減少していたという。行政としてどのような取り組みをしてきたのか、熱海市の齊藤栄市長に話を聞いた。
新たな課題も……
だが、新たな課題も浮かび上がってきたという。
その一つが労働力の確保だ。齊藤市長は「熱海の要である観光業は、他業種と比べて待遇や労働環境などが劣る」と切り出し、次のように続けた。
「観光客の増加に対応するため求人を出しても、人がなかなか集まらない現状があります。生産性向上をさせて待遇を改善する必要があるわけですが、これは行政だけで、または民間だけで解決できる課題ではないと思っています。行政と民間がより密に連携して解決策を探っていかなければいけません」
さらに、熱海市の人口減少に伴う税収の減少も、観光業にとっては死活問題だという。熱海市の人口は60年代中ごろは5万5000人近くいたのに対し、17年時点では3万7000人にまで減少している。
「魅力的な観光地をつくりあげていくには、整備などにかかる資金がどうしても必要になります。税収が劇的に増える見込みがない中で、財源をどう確保するか。最近、京都で宿泊税が導入されましたが、他の観光都市の取り組みや実績を参考にしつつ、観光客の方にも負担していただく選択肢も視野に入れ検討を重ねていきます」と明かした。
少し意外に思われるかもしれないが、熱海市を訪れる観光客の99%は日本人。経済的インパクトの大きさで近年注目を集める訪日外国人の割合は、わずか1%しかないのだ。
これは熱海市が訪日外国人にアプローチできれば、さらに観光客数を増やせるという大きな“伸びしろ”として捉えることができるだろう。
だが齊藤市長は、当面は“日本人向け”“訪日外国人向け”といったことを強く意識することはせず、まずは全ての観光客の満足度を高めることを目標にユニバーサルツーリズムを促進していきたいという。
「これからも観光客のニーズに合わせ、常に変化し続ける観光地・熱海を目指します。初めて熱海に足を運んでいただく方、往年の“熱海ファン”の双方に満足して頂ける熱海をつくっていきたい」と意気込んだ。
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