衰退している熱海になぜ観光客が増えているのか:かつてのイメージは「セレブな街」(3/4 ページ)
いま熱海に観光客が戻り始めている。一時はピーク時の半数まで観光客数が減少していたという。行政としてどのような取り組みをしてきたのか、熱海市の齊藤栄市長に話を聞いた。
毎年変わっていたブランドプロモーション戦略
翌13年にはブランドプロモーション戦略にもメスを入れた。
熱海市は民間事業者と共同で地元のブランドプロモーション戦略に取り組んでいたのだが、基本的には業者にまかせっきりだったという。その上、事業者を毎年変更していたため、戦略がコロコロ変わってしまっていたのだ。
齊藤市長は「市では予算を年度ごとに編成するため、事業やプロジェクトなども基本的には最長1年を上限に企画することが慣習化されていました。役所は“単年度主義”とやゆされることがありますが、こんなところでも役所の悪い部分が出てしまった感じですね……」と打ち明ける。
方向性が定まらないプロモーション活動をしたところで、熱海のイメージが定着しないのは明白だ。「まずは3年間は業者を変えずに、一貫したブランドプロモーション戦略を展開していこう」。民間企業からすれば当たり前にも聞こえるかもしれないが、熱海市にとっては大きな決断だった。
新しい戦略の元、プロモーションのメインターゲットを「流行に敏感で発信力がある若い女性」に設定した。「顧客を新規開拓していくには若い世代にも来てもらうことが必要ですし、熱海の“なんとなく古い”というイメージを刷新する狙いもありました」
13年に始めたブランドプロモーション戦略は15年に一旦終了したが、その実績を評価し16年からの3年間も同じ業者と取り組んできたという。民間事業者の協力があってこそではあるが、こうした熱海市の“役所”という殻を破った取り組みなどの結果、15年には観光客数は300万人以上の水準まで回復したのだ。
関連記事
- 低迷していた「カルピス」が、右肩上がりの再成長を遂げた理由
2019年に100周年を迎える「カルピス」がいま、再び成長している。販売量は横ばいで推移していたのに、10年ほど前から右肩上がりに伸びているのだ。変わらない味のロングセラーブランドが再成長できたのはなぜだろうか。 - どん底から復活したメガネスーパーは、なぜ「安売り」と決別できたのか
わずか数年前、倒産寸前まで追い詰められていたメガネスーパーの「V字回復」が注目を浴びている。どのようにどん底からはい上がったのか。失敗と復活の背景には、眼鏡業界のビジネスモデルの変化を踏まえた戦略の転換があった。詳しく解説する。 - 日本でのK-POP躍進の軌跡 長年支え続けてきた功労者に聞いた
"K-POP"が世界を魅了している。だが、日本で歩んできた道のりは決して平坦なものではなかった。K-POPを長年支え続けてきた功労者の1人であるユニバーサル ミュージック合同会社執行役員、中村卓さんに話を聞いた。 - 福岡市長の挑戦 東日本大震災を通じて見えたSNSの有用性と行政の課題とは
「東京電力に協力したいのですが、不足電力200万キロワットは関東圏の方の節電でしか解消できないのです」。2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、福岡市の高島宗一郎市長のSNSが注目を集めている。東日本大震災を通じて見えたSNSの有用性と行政の課題とは。 - スシローの進化についていけなかったかっぱ寿司
かつて業界をリードする立場だったかっぱ寿司が、競合他社に次々と追い抜かれている。逆転を許してしまった背景にはいったい何があるのだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.