コラム
「ATM」をバカにしてはいけない、知っているようで知らない箱のチカラ:経済学者が解説(2/5 ページ)
大抵の人は、まとまった現金が手に入ると銀行に預ける。よほど金額が大きくなければATMで入金する。銀行預金とATMは生活に密着しているわけだが、私たちはそのスゴさをどれほど理解しているのだろうか。『暗号通貨vs.国家』を上梓した経済学者、坂井豊貴氏が解説する。
銀行送金はすごい
銀行預金は送金に秀でている。これを考えるため僕が1万円を送ることを想像してみよう。相手は、銀行口座をもたない人物だ。
まず僕はATMから1万円を引き出さねばならない。僕は三井住友銀行を使っている。三井住友銀行は街角に多数のATMを設置してくれている。しかし日中忙しく働いていると、三井住友銀行のATMまで歩く時間はなかなかとれない。
そこで僕は近所のコンビニに行く。コンビニ店内のセブン銀行やイオン銀行のATMから現金を引き出す。手数料が少なくとも108円とられる。自分の時間を手数料というかたちで買うわけだ。
セブン銀行は、単独で2万4563台のATM(およびその簡易版であるCD)を設置している(セブン銀行公式Webサイト 2018年8月15日)。これは大変多く、メガバンクすべてのATMを合わせた2万6034台に迫っている(平成29年版 決済統計年報)。セブン銀行はATM手数料で利益を得ているが、ライバルはメガバンクではなく、セブン-イレブン店内のおにぎりや100円コーヒーだと聞いたことがある。
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