「ATM」をバカにしてはいけない、知っているようで知らない箱のチカラ:経済学者が解説(5/5 ページ)
大抵の人は、まとまった現金が手に入ると銀行に預ける。よほど金額が大きくなければATMで入金する。銀行預金とATMは生活に密着しているわけだが、私たちはそのスゴさをどれほど理解しているのだろうか。『暗号通貨vs.国家』を上梓した経済学者、坂井豊貴氏が解説する。
国際送金に革命を
とはいえインターネットで情報の送信が一瞬でできる現在、スウィフトの送金作業はまどろっこしい。速さだけなら飛行機で現金を輸送したほうが速いのだ。もう少し速く安価に国際送金ができないものか。
これを試みるテクノロジー企業が、04年に誕生した米リップル社だ。リップル社が提供するオンラインシステム「XRP台帳」では、各国の通貨が、XRPという暗号通貨に両替できる。XRPは本来エックスアールピーと呼ばれるべきものだが、日本では社名と一体的に「リップル」と呼ばれることが多い。
XRPは「ブリッジ通貨」の役割を果たす、XRP台帳のなかの現地通貨だ。この台帳のうえでは、異なる通貨のあいだでの送金が、XRPの橋渡しにより行われる。大まかに言うと、送金人は円をXRPに両替して送金、受取人はそのXRPを自国の通貨に両替して受け取る。迅速かつ安価に国際送金できる。
当然ながらXRPは、各国で別々の通貨が使われていることを前提とする通貨だ。しかしここで発想を変えてみたい。XRPそのものが世界通貨になれば、一番便利ではなかろうか。つまり、いちいちXRPで通貨を「橋渡し」するのではなく、XRPそのもので取引する。リップル社はそれを目指してはいないし、目指すべきというわけでもない。だが、もしそのような通貨があれば、国際送金は問題じたいが解消されてしまうだろう。
果たして、そのような日はやって来るのだろうか。
関連記事
- 「現金お断りの店」は、その後どうなったのか? ロイヤルHDの実験
1年ほど前、東京の日本橋に「現金お断り」のレストランが登場した。ロイヤルホストを運営するロイヤルHDが運営しているわけだが、キャッシュレスにしてどんなことが分かってきたのか。メリットとデメリットを聞いたところ……。 - CDも苦戦しているのに、なぜ中目黒のカセットテープ店は好調なのか
中目黒駅から徒歩10分ほどのところに、カセットテープ店があることをご存じだろうか。店名は「waltz」。CDの売り上げも減少しているのに、なぜカセットテープを扱っているのか。店主の角田太郎さんに聞いたところ……。 - 衰退している熱海になぜ観光客が増えているのか
いま熱海に観光客が戻り始めている。一時はピーク時の半数まで観光客数が減少していたという。行政としてどのような取り組みをしてきたのか、熱海市の齊藤栄市長に話を聞いた。 - 倒産寸前の町工場がタオルで大逆転! ヒットの秘密は「糸」と「伝え方」
倒産寸前の状態から大ヒット商品を生み出した町工場がある。岐阜県にある浅野撚糸だ。累計680万枚を販売したタオル「エアーかおる」はどのように生まれたのか。V字回復を成し遂げた商品開発の秘密に迫った。 - 本の販売は苦戦しているのに、入場料1500円の書店が好調なワケ
東京六本木に、ちょっとユニークな書店が登場した。入場料1500円を支払わなければ、本を見ることも、購入することもできないのだ。店名は「文喫」。店内はどのような様子なのかというと……。 - 築46年なのに、なぜ「中銀カプセルタワー」に人は集まるのか
新橋駅から徒歩5分ほどのところにある「中銀カプセルタワービル」をご存じだろうか。立方体の箱がたくさん積まれていて、丸い窓が並んでいる。1972年に建てられたこのビルが、数年前からジワジワ人気が出ているのだ。その謎に迫ったところ……。 - 「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。 - 本当に、ATMで硬貨を取り扱う必要があるのか
厳しい経営環境を迎えている金融機関のコスト削減の対象の1つがATM。本当に今のような高機能、特に硬貨の取り扱いが必要なのだろうか。メガバンクによる共通化を機に、再考の余地はありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.