平均にもいろいろある あなたが本当に求めたいのは?:算術に加重……(1/3 ページ)
データの分析のうち、頻繁に行われるのが「平均をとる」という作業である。しかし一言で平均といっても、いろいろな種類があるのだ。
自然科学でも社会科学でも、データをあれこれと分析して、そこから仮説や命題を裏付けたり否定したりするような結果を導く。こうしたデータの分析のうち、頻繁に行われるのが、「平均をとる」という作業である。
通常、平均は、データを抽出した元の集団の傾向を表すものと考えられている。このため、確率論や統計学では、平均に関する定理が多く、その考察が欠かせないものとなる。
平均は、小学校の算数で割り算をマスターした後に、高学年くらいから身に付けるものだ。各データの値を足し算した結果を、データの個数で割り算して、平均が計算される。例えば、ある学校のクラスで生徒の平均身長を求めるには、各生徒の身長の合計を生徒の人数で割ればよい。これは「算術平均」と呼ばれる。最も単純で、分かりやすい平均である。
しかし、算術平均が役に立たない場合もある。
例えば、ある高級青果物店では、リンゴを1個400円、ミカンを1個100円で売っているとする。ある日、この店でリンゴが200個、ミカンが600個売れた。リンゴとミカンを合わせた平均単価はいくらだろうか。
この場合、2つの単価の算術平均である250円〈=(400+100)÷2〉には意味がない。平均単価を求めるには、合計の売上高を、合計の売上個数で割り算する必要がある。売上高は、リンゴ8万円、ミカン6万円で、合計14万円。これを合計の売上個数800個で割り算した、175円が平均単価となる。これは「加重平均」と呼ばれる。
また、成長率や伸び率など、物事の変化を表す率の平均には、別のものが必要になる。預金の利率で考えてみよう。
預金の利率は、複利で表すと扱いやすい。これは、最初に預けた元本と前年度までの利息の合計に対して当年度の利息が付く、という利殖の仕組みを反映した数値だ。ある銀行の外貨預金で、利率が1年目は30%、2年目は2%と、大きく変化したとしよう。このとき、2年間の平均利率は、いくらだろうか。算術平均の16%ではない。
元本として100万円を預けた場合で考えてみよう。1年後には、元本に30%の利子がついて130万円となった。2年後には、この130万円に2%の利子がついて、132万6000円に増加した。つまり、2年間で1.326倍に増えたわけだ。1年間でみると、1.326の平方根をとって、1.152倍ほどに増えることを意味する。つまり、平均利率は約15.2%となる。これは「幾何平均」と呼ばれる。
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