平均にもいろいろある あなたが本当に求めたいのは?:算術に加重……(2/3 ページ)
データの分析のうち、頻繁に行われるのが「平均をとる」という作業である。しかし一言で平均といっても、いろいろな種類があるのだ。
次に、速さや濃度や圧力といった、何かを何かで割り算して得られる比について、平均を求めることを考えてみよう。
ここでは、小学生向けの時間・距離・速さの問題が有名だ。家から学校まで1.5kmの距離を、徒歩で往復するとしよう。行きは時速5km、帰りは時速3kmで歩いたとすると、往復で平均の速さはどれくらいだっただろうか。ここで慌てて算術平均をとり、時速4kmと答えてはいけない。まず、往復にかかった時間を考えてみる。1.5kmを、時速5km、3kmで割り算する。行きは0.3時間、帰りは0.5時間かかったことになる。つまり、往復で3kmの距離を、0.8時間かけて歩いたことになるから、3kmを0.8時間で割り算して、平均の速さは、時速3.75kmとなる。これは「調和平均」と呼ばれる。
実は、距離が1.5kmでなくて、どんな長さであっても、調和平均は変わらない。調和平均を割り算で求めるときに、往復の距離3km(割られる数)と、往復の時間0.8時間(割る数)は、ともに片道の距離1.5kmによって決まる。このため、割り算をすると、互いに打ち消し合うのだ。
さらに、あるデータを取ったときに、各データの算術平均からのかい離がどれくらいあるかという、データのブレについて平均をとることを考えてみよう。ブレの平均をとるときには、算術平均ではうまくいかない。例えば、身長が1.6、1.7、1.8mのAさん、Bさん、Cさんの3人について、ブレの平均を考えてみよう。この3人の平均身長は1.7mなので、ブレは、Aさんはマイナス0.1m、Bさんはプラスマイナス0m、Cさんはプラス0.1mとなる。このブレの算術平均をとると0mとなる。
しかし、これでは3人の身長がいずれも1.7mでブレがない場合と同じ結果になってしまう。そこで、ブレを二乗したものの算術平均をとり、その平方根をとる。この例では、ブレの二乗の算術平均は0.00666……〈=((マイナス0.1m)の二乗+0mの二乗+0.1mの二乗)÷3〉。その平方根は、約0.082mとなる。これは「二乗平均平方根」と呼ばれる。統計学などで、よく目にするものだ。
関連記事
- 元日銀マンが斬る 厚労省の統計不正、真の“闇”
厚生労働省の「毎月勤労統計」が炎上している。これに関する不正をかばうものはいないだろう。誰の目に見ても明らかな不正である。しかしこの問題には深い「闇」があるのではないかという。 - もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。 - 大人になったら使わないのに、なぜ私たちは「分数」を学ぶのか
社会人になって「微分・積分や二次関数」を使ったことがある人は少ないはず。いや、ひょっとしたら、小学校の低学年で学ぶ「分数の足し算」も使ったことがないのでは。大人になっても使わないのに、なぜ私たちは「分数」を学んできたのか。その理由は……。 - どれほど深刻? 厚労省不正統計問題を「超」分かりやすく解説
厚生労働省が作成する統計で、不正が行われていたことが波紋を呼んでいる。本記事では可能な限り分かりやすく、今回の統計不正について解説してみたい。 - 「ムダな会議」による企業の損失は年間15億円
長時間労働や労働生産性について議論する際、しばしば指摘されるのが、「会議、打ち合わせの多さ」だ。果たして、日本企業はどのくらいの時間を会議に費やしているのだろうか……?
Copyright © NLI Research Institute. All rights reserved.