平均にもいろいろある あなたが本当に求めたいのは?:算術に加重……(3/3 ページ)
データの分析のうち、頻繁に行われるのが「平均をとる」という作業である。しかし一言で平均といっても、いろいろな種類があるのだ。
最後に、ある会社の職員の平均年収を考えてみる。
実は、平均年収というときの平均には、いろいろな前提が置かれているので注意が必要だ。例えば、組合員平均。労働組合に加入している職員の平均年収だ。組合に加入していない役員や管理職は対象外となる。そのため、組合員平均の平均年収は、実態よりも小さな金額になる。
また、平均をとる対象は正社員だけか、それとも派遣社員・パートスタッフ・アルバイト職員も含むのかによっても、平均年収は大きく違ってくる。派遣社員等の職員占率が高い会社で平均年収を見るときには、対象職種に目をこらす必要がある。さらに1人、2人の高給役員のために、平均年収が歪むという問題も出てくる。中小企業の、ある会社を考えてみよう。
この会社はよくあるワンマン経営で、社長の年収は1億円と突出して高い。一方、50人いる従業員の年収は、一般的な給与所得者の水準だ。役職や勤務年数などによって異なり、10人の管理職は平均700万円、40人の非管理職は平均500万円となっている(この平均は、算術平均)。このとき、社長も含めた51人の算術平均をとると、平均年収は約725万円となる。
社長の年収が、平均年収を引き上げている。だが、ほとんどの職員の年収は、725万円未満である。この会社の職員の年収を表す数値としては意味がないかもしれない。そこで代わりに、51人を年収が高いほうから順に並べたときに、ちょうど真ん中の26番目となる職員の年収を見てみる。このほうが、この会社の平均的な職員の年収として意味があるだろう。この値は「中央値」と呼ばれる。中央値は、平均順位のデータの値を表す。
以上のように、ひとくちに平均をとるといっても、いろいろな種類がある。何かのデータを収集して平均をとる場合、どの平均を使うべきか、よく考える必要があると思われるが、いかがだろうか。
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