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嵐の活動休止で考える「中年の発達課題」とSMAPとの違い世の中の写し鏡か?(2/4 ページ)

2020年をもって活動を休止する嵐。彼らはちょうど初期成年期から成年期に差し掛かる年代であり、20年にはリーダーの大野さんも40歳になる。彼らは自分たちの発達課題を自覚したのかもしれない。ライフサイクル理論を用いて嵐の解散について考えてみたい。

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GLOBIS知見録

■初期成年期:他者と親密性の構築(親密性 対 孤独)

 嵐のメンバーは「初期成年期」にあり、そろそろ「成年期」に差し掛かろうとしている。この時期は、同性の友人や異性の恋人などの信頼できる人物と親密な関係性(親密性)を構築することがテーマになる。

 親密性を構築するには、自分のアイデンティティと他人のアイデンティティを融合させることが必要だ。しかし、青年期に自分のアイデンティティが確立できていない人は、自我が失われることを恐れ、他人との接触を避けるので孤独に陥る。

 また、アイデンティティを確立していたとしても、自分が親密になりたいと思う相手が、ありのままの自分を受け入れてくれるとは限らない。そうしたときに人は不安や孤独感を覚える。

 嵐はメンバー間での親密性は確立しているようだ。そう考える理由は、活動休止会見で二宮さんが語った「5人じゃなきゃ嵐じゃない」という発言にある。大野さんがメンバーに活動休止の意向を伝えたのは3年前で、残りの4人で活動する選択肢もあった。しかし、5人じゃないと嵐じゃない、ということで、グループとしての活動休止に至ったという(この点は、16年に解散したSMAPと異なる)。

 しかし、仕事では親密性を獲得している一方で、アイドルという職業上、プライベートでは課題を積み残している。各メンバーは恋愛のうわさはあるものの、公式にそれを認めたことはなく、いまだに全員独身である。グループとしての人気が高くなればなるほど、結婚が難しくなるのが現実だろう。現在の嵐はいまだにジャニーズのトップアイドルである(ファンクラブ会員のべ250万人、シングルCDを出せば50万枚は売れる)。

■成人期:次世代の世話・育成(世代性 対 停滞)

 成人期前期(40歳〜)では、「世代性」と「停滞」の拮抗が課題となる。40歳にもなると、肉体的にも精神的にも変化が乏しくなってくる。そして、これまでは自分の社会的地位を高めることに邁進してきた人も、周囲から「次世代を育成する役割」を期待されるようになる。

 これまで培った経験や知識を基に、後輩(他者)から求められることを与え、支援していくことで、自分自身も成長し、活性化する。そうなると、ますます後輩から求められるようになる。しかし、後輩(他者)への関心が薄く、後輩に対して能動的なかかわりを避けた場合、自己満足や自己陶酔に陥りやすくなる。それが「停滞」である。巷にいる、頑固な中年、話を聞かない中年をイメージすればよい。

 嵐のメンバーは、数年後にこの課題に直面する年齢である。今はまだ自分たちのことだけ考えていればいいが、そろそろ次世代のことも考えねばならない。

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