嵐の活動休止で考える「中年の発達課題」とSMAPとの違い:世の中の写し鏡か?(4/4 ページ)
2020年をもって活動を休止する嵐。彼らはちょうど初期成年期から成年期に差し掛かる年代であり、20年にはリーダーの大野さんも40歳になる。彼らは自分たちの発達課題を自覚したのかもしれない。ライフサイクル理論を用いて嵐の解散について考えてみたい。
中年男性アイドルグループは、世の中の写し鏡か
世間で流行している芸能や風俗は、今の世の中を写す鏡である。なぜ、現代の日本では嵐やSMAPのような中年男性アイドル(嵐を中年と呼ぶのはやや失礼なのを承知で)がトップアイドルとして君臨しているのか。
冒頭のジャニー喜多川氏の発言に戻ろう。「昔は、嵐くらいの年齢で歌ったり踊ったりすると笑われたものです」。昭和のジャニーズは、基本的に20代前半で解散していた。あのころと今で、何が変わったのか。
ここからは私の仮説だが、SMAPや嵐のように、成年期の発達課題をスルー(向き合っていない)している人が増えたのではないか。つまり、「青年期に留め置かれている30代〜40代」が、同じく青年期に留め置かれている彼らを強く支持する(コアな支持層は女性)。
私がそう考える理由はいくつかある。ひとつは、未婚化と晩婚化が進んでいることに加え、恋愛自体をしていない独身者が増えていること(親密性に課題)、人口減少傾向によって、30代や40代でも職場で若手扱いされることが増えていること(世代性に課題)、などである。
そう考えると、日本で中年男性アイドルが定番化してしまっているのは、喜ばしいことではないかもしれない。この流れだと、Hey!Say!JUMP(25〜29歳)も40のオジサンになるまでアイドルであり続ける可能性が大きい。だからこそ、周囲の惜しむ声に屈せず、自分たちで新たな道を歩む決断を下した嵐のメンバーの勇気を称えたい。
著者プロフィール
金子浩明(かねこ ひろあき)
グロービス経営大学院 シニア・ファカルティ・ディレクター/教員
東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科 修士課程修了。組織人事系コンサルティング会社にて組織風土改革、人事制度の構築、官公庁関連のプロジェクトなどを担当。グロービス入社後は、コーポレート・エデュケーション部門のディレクターとして組織開発のコンサルティングに従事。現在はグロービス経営大学院 シニア・ファカルティー・ディレクターとして、企業研究、教材開発、教員育成などを行う。大学院科目「新日本的経営」、「オペレーション戦略」、「テクノロジー企業経営」の科目責任者。また、企業に対する新規事業立案・新製品開発のアドバイザーとしても活動している。2015年度より、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)プログラムマネージャー(PM)育成・活躍推進プログラムのメンター。
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