日本のタブーに触れた「バカッター」たち:なぜバイトテロは大炎上するのか(4/4 ページ)
繰り返されるバカッター騒動、バイトテロは、日本のタブーである「食べ物を大事に」に触れたから炎上した。欧米で、人種差別や動物虐待が炎上しやすいように、日本では「食べ物」がポイントだ。
炎上とタブー
タブーは一般的にやってはいけないこと、触れるとトラブルになるものを意味するが、辞書では以下のように説明されている。タブーを犯すと炎上する、本人はもちろん周囲にも被害を与える、という説明はまるでバカッター騒動の解説のようにも読める。
『ある事象(事物、人,行為など)を、感染性の危険を帯びているとみなして、それに触れたり、更にその行為をしたりすることを禁じる規則があり、その規則に違反したものは自動的に災厄に見舞われると考えられているとき、そのような規則をタブーと呼ぶ。タブーを侵犯した者は、自分自身が災厄に見舞われるだけでなく、自分の周囲の人々や共同体にも災厄をもたらす。
タブー【taboo】の項目から抜粋 世界大百科事典第2版 平凡社』
バカッター騒動に似たものとして、昨年はイギリスの高級ブランド・バーバリーの大量廃棄が問題となった。洋服を大量に捨てることはもちろん好ましくないが、そこまで大騒ぎするほどの問題なのか? と個人的には思ったものの、騒動の理由が洋服の材料となる毛皮や綿が大きな要因と聞いて納得した。
毛皮は動物愛護の観点から、綿は栽培に大量の水や農薬を必要とするため環境問題の観点から元々批判があり、それらを使って洋服を大量に生産し、更には売れ残りをブランド価値維持のために廃棄する……金もうけのために動物虐待や環境破壊なんてとんでもない、というロジックだ。
大切なものを粗末にすると炎上する
つい先日、老婆が犬を思い切り蹴り飛ばす動画がバカッター騒動とほぼ同時期にツイッター上で問題となった。国内の出来事だが、これを知っている人はかなり少ないだろう。すし屋やコンビニの騒動と比べれば100分の1も騒がれず、世間的にはほとんど注目されていない。
欧米であれば、食べ物より動物虐待の動画が注目された可能性が高いのではないか。英国では100年以上前に動物愛護の法律が作られ、米国では民間団体が長期間に渡って動物警察の役割を担った歴史もあるなど、動物愛護運動は日本より進んでいるからだ。
「要するに日本は食べ物を粗末にすると炎上するってことでしょ?」というのは早合点だ。
これらのトラブルをより抽象的に解釈すれば、食べ物に限らず「多くの人が大切にしているものを粗末に扱うとトラブル・炎上に発展する」ということだ。そしてその背景には文化的なタブーが存在する。注意しなければいけないのは飲食店だけではない。あまたある「タブー」に触れると大きなトラブルになる。
後編では、ではどうすればバカッターとなりかねないアルバイトを教育していけるのか? を紹介する。
執筆者 中嶋よしふみ
保険を売らず有料相談を提供するファイナンシャルプランナー。住宅を中心に保険・投資・家計のトータルレッスンを提供。対面で行う共働き夫婦向けのアドバイスを得意とする。「損得よりリスク」が口癖。日経DUAL、東洋経済等で執筆。雑誌、新聞、テレビの取材等も多数。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。マネー・ビジネス・経済の専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長も務める。お金より料理が好きな79年生まれ。
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