日本のタブーに触れた「バカッター」たち:なぜバイトテロは大炎上するのか(3/4 ページ)
繰り返されるバカッター騒動、バイトテロは、日本のタブーである「食べ物を大事に」に触れたから炎上した。欧米で、人種差別や動物虐待が炎上しやすいように、日本では「食べ物」がポイントだ。
日本人の「タブー」に触れたバカッターたち
まず、今回の騒動はネットが原因で起きた「ネット上の問題」と考えるべきではない。SNSで拡散しなくとも一歩間違えば食中毒の被害者が発生していた可能性を考えれば、ネットに動画が流出した程度で済んでマシだったと考えるべきだ。今後の対策はネットの拡散を防ぐことではなく、問題行動を起こさせないことが目的になるだろう。
先ほど挙げたバカッター騒動は食べ物に関するものばかりだ。結論を書いてしまうと、食べ物を粗末に扱うことは日本人にとって最大の「タブー」で、大炎上した理由はここにある。
日本人は宗教的な規範が薄いといわれるが、誰もが小さいころから刷り込まれて育つ教えがある。
親は大切に
お年寄りは大切に
弱い者イジメをしてはいけない
人に迷惑をかけてはいけない
これらの注意や教えを一度も聞いたことがない人はいないだろう。そして親や教師に小さい頃から刷り込まれる教えの中で最も強固なものが、「食べ物を粗末にしてはいけない」だ。食べ物を残すだけで親や教師から怒られる。学校では給食を完食させることも教育の一環で、おう吐するまで無理やり食べさせて問題になる事もあるほどだ。
近年になって報じられるようになった「恵方巻き」の大量廃棄は、批判の声が年を追うごとに大きくなっている。これもタブーに触れている事が原因だ。
6年ほど前に問題となったコンビニのアイスケース事件、そして10年以上前に問題になったテラ豚丼事件(牛丼チェーンで過剰に山盛りにした豚丼を悪ふざけで作る動画が問題となった)と、いずれも食べ物に関するもので今回のケースと酷似している。ネットの炎上は原因も様々だが、食べ物を粗末にして炎上というケースはすでに典型的なパターンとすらいえる。
炎上に表れる「お国柄」
日本では食べ物に関するツイートで大騒動になったが、海外ではどうか。2017年に世界最大のバカッター騒動が起きている。とある女性が英国からアフリカ旅行に向かう際、飛行機の搭乗前に以下のような「冗談」をつぶやいたことがきっかけだ(翻訳は一部筆者の意訳)。
「これからアフリカに向かうけど、エイズになりませんように。まあ冗談だけど、なるわけないでしょ、私は白人なんだし」
エイズになるのは有色人種だけと受け取れるようなツイート後、本人がネットにつながらない飛行機の中で過ごしているうちにツイッター上で大騒ぎとなった。飛行機を降りる頃には勤務先をクビになり、世界中から人種差別主義者として非難され大炎上した
人種差別は言うまでもなく極めて深刻なタブーだ。海外では重職にある人が口を滑らせて職を失うこともある。昨年は日本でもLGBTに関する不用意なコラムが問題となり雑誌が廃刊になったが、人種差別やLGBTへの差別など権利侵害への意識の高まりは日本の場合は最近になってやっと強まってきた動きといえるだろう。
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