「平成女子」の憂鬱 職場に取り憑く“昭和の亡霊”の正体とは?:ダイバーシティって本当?(4/5 ページ)
平成元年生まれの働く女性に本音を直撃。国や企業が掲げる「女性活躍」の建前とは裏腹に、特に「男社会」な金融系の職場にはびこるひずみを問う。
ワークライフバランスの「転換」世代?
生まれた直後にバブル崩壊、08年にはリーマンショックと不景気が続き、就活時には東日本大震災が重なった彼女たち「平成女子」。その特徴について、リクルートキャリア(東京都千代田区)の就職みらい研究所所長の増本全さんは、「彼女たちは個人や個性を尊重する教育に慣れ親しんだ世代。しかもリーマンショックや震災を強く感じて入社している。ちょうど仕事への考えが変わる端境期なのでは」とみる。
実際、多感な時に社会的な大事件を体験した世代だったせいか、ワークライフバランスへの考えがこの世代から変わってきたとするデータもある。公益財団法人・日本生産性本部が実施している「新入社員『働くことの意識』調査」では新入社員に毎年、「仕事中心」と考えるか、「(私)生活中心」かを聞いている。
ここしばらく「両立」という回答が一貫して多数派であるものの、実は私生活中心という回答は1991年から減少傾向にあり、仕事中心派がじわじわと増えていた。しかし、私生活中心派が逆に増加傾向に転じたのが、ちょうど平成元年(89年)生まれの大卒者がストレートで入社する2012年ごろだった。
一方、「平成女子」が就職するタイミングの前後で、企業の女性活用の機運が高まってきたという指摘もある。パーソルキャリアが運営する転職サイトdodaの大浦征也編集長は「自動車メーカーでは5年くらい前から女性採用がはやり始めた。金融や製造といった女性総合職がもともと少ない傾向にあった業界では、(「平成女子」に)ロールモデルになってほしい、という風潮があったと思う」と分析する。
「彼女たちに『モデルになって』と企業が望むこと自体が悪いわけではない」とみる一方、大浦編集長は女性のライフステージを考えると、金融など他業界に比べて古い体質が残っているとされる業界では、管理職への昇進が産休や育休とかぶる30代に訪れる点が構造的な問題だとみる。「IT大手に女性管理職が多いのは、単に昇進する時期が(男女問わず)早いから」(大浦編集長)。
管理職への登用でも、理想とされる部長や課長像が「抽象的なビジョンを語れるか」といった、いかにも男性的な価値観で決められている場合が多く、女性社員から「ああはなれないし、なりたくない」と思われがちだという。「企業が女性を評価する側に積極的に引き上げていけば解消していくだろう」と考える。
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