「3年以内に辞める若手は根性なし」という批判が、時代遅れになった理由:ポスト平成の転職論(1/3 ページ)
売り手市場が続き、転職が活発化している現代においても、「新卒として入った会社には最低3年は在籍したほうがよい」「3年で辞める若手は根性がない」といった説をよく耳にする。この説はどれほどの正当性があるのか。なぜこのような説が生まれるのか。識者に聞いた。
特集「ポスト平成の働き方」
2019年5月1日に元号が変わり、新たな時代が幕を開ける。平成の約30年間でビジネス環境は大きく変化した。その最大の要因はインターネットの登場である。しかし一方で、働き方や企業組織の本質は昭和の時代から一向に変わっていないように思える。新時代に突入する中、いつまでも古びた仕事のやり方、考え方で日本企業は生き残れるのだろうか……? 本特集では、ポスト平成の働き方、企業のあるべき姿を探る。
第1回:「平成女子」の憂鬱 職場に取り憑く“昭和の亡霊”の正体とは?
第2回:「東大博士の起業家」ジーンクエスト高橋祥子が考える“ポスト平成の働き方”
第3回:本記事
売り手市場が続き、転職が活発化している現代においても、「新卒として入った会社には最低3年は在籍したほうがよい」「3年で辞める若手は根性がない」といった説をよく耳にする。例えば、新卒入社した若手が短期間で離職すると、「“最近の若者”はすぐ会社を辞める」と嘆いたり、離職の要因を「ゆとり教育が職業意識を変えたからだ」などと結論付けたりする声が聞こえてくる。
「根性なし」「ゆとり」という批判はおかしい
こういった風潮に対し、「早期離職する若手を『根性なし』『ゆとり』などと批判するのはおかしい」と指摘するのが、中央大学 ビジネススクール 大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授だ。
佐藤教授は「もしそうした欠点が若者にあるなら、早期離職した若手はどの会社からも拾われず失業してもおかしくないだろう。だが現実はそうではなく、ほとんどの人が転職できている。若手の資質や根気に問題があるわけではない」と強調する。
佐藤教授の主張は、調査結果からも裏付けられている。同教授が座長を務める「若手の就職・転職の在り方に関する検討会」が近年の若手の離職理由を調査した結果、2018年に社会人3〜6年目を迎えた若手の中で早期転職経験がある人の退職理由は「仕事内容への不満」(51.5%)、「人間関係への不満」(40.9%)、「賃金への不満」(25.5%)が上位を占めた。「社内ルール・常識」(51.0%)、「上司の能力・資質」(46.7%)、「会社の事業方針・ビジョン」(45.4%)などが入社前の予想を下回っていたと答える層もいた。
3年以内に辞めた若手の7割が「転職先に満足」
これだけを見ると、「やっぱり根気が足りないじゃないか」と思われた人も多いかもしれないが、実はそうではない。一連の理由で1社目を早期離職した若手に対し、2社目での状況を聞いた結果、70.7%が「転職先に満足している」と回答。新卒入社先から賃金が下がった人(45.6%)や、小規模な企業に転職した人(61.9%)も多数存在したが、こうした層の約6〜7割が転職先に高い満足度を示していた。
これらの結果からは、仕事内容や人間関係などの環境さえ合えば、多少待遇が悪かったり勤務先の知名度が下がったりしても、若手は不満を持たず前向きに働けることがうかがえる。
厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」調査では、大卒者の3割が入社から3年以内に離職する――という“3年3割の法則”が約30年間ほとんど変わっていないことも示されており、佐藤教授は「『最近の若手はすぐ辞める』という批判も間違い」と指摘。「こうした状況が続くのは、若手の根気うんぬんではなく、日本の就職活動の仕組みによるためだ」と考えている。
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